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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 01/17/01:56

消える紅い島・夢の終わり


人との最後の闘いは勝つ事が出来なかった。
あまりにも強い相手。
なす術もなくマナを奪われ、僕たちは倒れる。

それでも残ったマナの力で立ち上がり、本当に最後となる闘いが始まった。

対峙するのは炎に属する妖異。
妖異の繰り出す紅の炎に照らされながら僕たちは闘う。

リョウコの華麗な弓技を繰り出す勇姿、キズナを慕う獣達の跳ぶ姿・・・
そして、昔の時のように闘いに真っ直ぐな瞳をして立ち向かうキズナの姿。
その姿を忘れないように心に焼き付けよう。 夢の一時でも僕にとっては
大切な20日間。現実と同じぐらい大切な時間だった。
決して 忘れない。


「二人とも今日でお別れね。今まで楽しかったわ。」

闘いの後、リョウコがそう言って僕たちに手を差し出してくれた。
僕もキズナもリョウコの手の上に手を重ねる。

「忘れません。アナタの強さとその優しさ。
 そして、また何処かで出会えたら…その時はまた今のように共に。」

「どうか、お元気で。また、その日が来たら…会いましょう!」

その言葉を聞いてリョウコさんは静かに微笑んで…片手を上げながらゆっくり
と何処かへ歩いて行った。


残された僕たちは紅い空を見上げる。

「ホルス… もし、これでこの世界から私達が消えて… 
 この世界が見る夢が覚めたとしても… わたし忘れないよ。

 ホルスの事、ホルスが私を愛してくれた事、私がホルスを愛した事
 ホルスと一つになった夜、痛みも喜びも、その時の風の匂いも、
 空の星座の形も

 もし、これが永遠…の、おわか、れ…になっても、忘れない…」

キズナの声は震えていた。
必死に何かを堪えているかのように。

「それに、私は強くなった。ホルスとリョウコさんに色んな物を貰って、
 強くなったよ。
 だから、今日が最後でも泣かない。もしその時がきたら笑ってこう言うよ

 「またね!」って…」

そう言って笑顔を向けてキズナは僕を見る。笑いながらもその両の瞳からは
涙が溢れていた。僕はそっとキズナを抱きしめる。

「絶対に忘れない。この20日間の事もキズナの事も。忘れるものか。
 そして、キズナに知っていて欲しい。僕の真実の名前。

 僕の名前は…"シオン・ホルス・クサナギ" これが今の僕の真実の名だ。」

昨日まで思い出せなかった僕の今の本当の名前。
この島では誰も知らない僕の真名。キズナにだけは知って欲しかった。

「交差する事のない世界で僕たちは生きて行かなければならない…
 現実の僕はまだ何の力も持たない赤子だけど、大人になったら…

 必ずキズナを捜す。貴女と会える方法をどんな事をしてでも探し出す。
 それが理を犯す行為だとしても。

 もう一度 キズナと出会う為に。」

そう言ってキズナの涙を指ですくった後、口づけをする。

「だから 悲しい顔をして泣かないで。
 だから…忘れないで 僕の事。 そして僕の名を呼んで。
 その声を頼りに僕はキズナを捜すから。会いに行くから。


 ・・・2人だけの約束。」

泣きそうになる気持ちを抑えて、僕は右手の小指をキズナに差し出した。
キズナも涙を手で拭って僕の顔を真剣なまなざしで見つめる。

20日目の2人


何処からか声が聞こえた。
この島にいる誰もが皆 この声を聞いたに違いない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  これは 誰 の夢?


  長い 長い 夢の終わり。



  もうすぐ 朝 が来る。







  さようなら。


  いつかまた訪れる 夜 まで・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何もかもが消えて行く。
島に居た人達も、この島も。

何もかもが白い光に飲み込まれて、目の前から消えた。



泣きながら笑って僕を見ていたキズナも・・・。

最後にキズナの唇が動いた。 
キズナは僕に何かを言っていたのに、





・・・僕はそれを聞く事が出来なかった。


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赤い月の夢



少しずつ少しずつ崩壊する島。

島に捕われた者達を逃げられぬようにするかのごとく、海岸線だった所は
高く高く切り立った崖へと変化した。崖は少しずつ島を狭めて行く…。
その高さと、足がかりのない平坦な岩壁はまるで囚人を逃がさぬ檻のようだ。
砂地と疎らな草地、高い崖、小さな水場・・・。
今 この島にあるのはそれだけ。

崖に囲われた小さな空は、血のように紅い。
この島の空は紅く、炎は蒼い。
夜だけは蒼い帳で空は青紫へと変じる。それでも何処か紅い色を残して。


始めの頃、青白い光を大地へと投げかけていた月も、見上げると紅い月に
変わっていた。 崩壊への前触れ? それとも紅い夢の世界本来の色へと
戻ったのか・・・。


皆が知っている。
この島が明日で消えてしまう事。 勝っても負けても明日で全てが終わる。
ここにいる自分が消えてなくなってしまう事。

たった20日間。
それだけの時間で得た物、大切な人、大切な物、大切な絆・・・。
それが明日で全て無くなってしまうのだ。 喪失する恐怖が心を蝕む。



気がつくとキズナもリョウコもいなくなっていた。
焚き火の側に1人残されて、僕は不安にかられた。慌てて立ち上がり2人を
探す。蟲の声、風のざわめきの中から微かなキズナの声を拾い、辿る。
崖の向こうにある海の潮の香に紛れている、微かなキズナの匂いを辿る。

焚き火から少し離れた樹の下で、キズナとリョウコは座って話していた。
リョウコが僕に気付き、立ち上がり僕の方へと歩いてきて・・・
軽く僕の胸を叩く。

「後はアナタの領分ね。」

クスと小さく笑ってリョウコは焚き火の方へと去って行った。

キズナは樹の下に座って泣いていたのか、随分と泣きはらした顔で僕を見る。
不安なのは僕も同じ。 なぐさめようとそっとキズナに口づけた。




そのまま2人で互いを求める。
感じたい。今こうして近くにいる事。
こうして2人が1つになった事。誰よりもお互いを欲して想っている事。

忘れたくない。忘れないで欲しい。
だから僕もキズナも互いの身体を食むように、激しく求めて貪った。
僕は自分がキズナを忘れないように、キズナが僕を決して忘れないように
キズナの身体に印を刻む。
キズナも同じように僕の身体に印を刻む。 僕がキズナだけの物であると
いう印。


何度も何度も自分の中に打ち寄せる波に身を任せて、2人身体を重ねた。
最後の宴。もう2度とこうする事は叶わぬと知っているから・・・。

何度も何度も・・・。



紅い月だけが僕たちを見ていた。






忘れないで。キズナ。
貴女を大切に想う者がいた事。
貴女を愛している者がいる事。

夢の中の出来事だと、悲しまないで。


忘れないでいて。僕の事。僕の名前を。



そして 優しいその声で僕の名を呼んで。
僕はその声を頼りに いつか必ず貴女を捜して側に行くから。

過去も未来も、星座も越えて
貴女の元へと行こう。


もう一度 貴女を抱きしめる為に。
もう一度 貴女のその笑顔を見る為に・・・。


星空の下で


僕たちは何とか生き延びていた。
久しぶりに闘った人達とは勝敗がつかず、引き分けとなって互いが
マナを失う事もなく・・・。
今日はまた違う人達と闘い、ボロボロになりながらも僕たちが勝って
相手からマナを奪った。
今 僕たちのいるエリアにはたくさんの人がいるけれど、3人で組んで
いる人達はあまりいなかったらしい。明日は誰かと闘う事もなくて済む
と、キズナが言った。


島の怪物の強さも最初の頃より強くなって、闘う度に傷だらけになる。
それでも…何とか今日も勝ち進んで僕たちはここにいる。




夜の帳が降りて、島が蒼い闇に包まれる時間。

キズナは僕の望みを受け入れてくれた。
竜だった頃から、僕がずっと心の何処かで望んでいた事。

彼女を僕だけの物にする事。


互いを求め、互いがその身を貪る。
本能が導くままに、己の感情が求めるままに・・・。
何もかもが溶けて1つになってしまうかのような感覚。身体も頭の芯
も熱くなって、与えられる快楽を2人でただ求めた。

この時間が永遠に続けばいい。そんな事を思いながら。


18日目の2人


月が傾きかけ、狂宴の一時は終わり・・・。
キズナはぐったりして僕の腕の中で眠っている。


「わたし、生まれてから初めてなの。
 誰かに必要とされたの…。」

2日前、キズナは僕にそう言って泣いた。
そして僕の事が好きだと。そう言ってくれた。
ずっと一緒にいたいと。

本当の僕たちが在るべき世界は、多分本来交わる事のない遠い世界
なんだろう。たった20日間、この僅かな時間が僕たちに与えられた
共にいる事の出来る時間。


常に側にいる事は出来なくても、傷ついたキズナを支える為に何か
僕に出来る事はないのだろうか?




テラとペレが言っていた「神」という存在が本当にあるのなら・・・
僕は願いたい。


「どうか…キズナを…
 キズナの心を救って」


ただそれだけを。

僕の在るべき場所


+++++++++++++++++

良い匂いがする。
料理の匂いだろうか? 匂いが気になって目を開ける。

僕は大きな背中に背負われていた。
濃い茶色の髪、耳には金色の珥堕。随分と大きな男の人が僕を背負って
鍋の前で何やら作業をしている。

「シュラ、じゃあ 後の事はお願いしていいわよね?」

後ろから女の人の声がする。
いつも僕が聞いていた歌と同じ声・・・。

男の人は鍋から離れて、声のする方へと移動した。
居間…だろうか? そこには冒険装備を纏った黒い髪、紅い瞳の女の人
が立ってこちらを見ていた。
大きくて強い瞳の・・・。

「おい! ニオ! まさかお前全部オレに押し付けて・・・
 探索に出るってんじゃないだろうな?」

男の人は少し情けない声を出して女の人に話しかけている。

「探索に出たら1日どころか何日もかかるだろ!
 その間のシオンのミルクとかど〜すんだよ! オレの乳からは
 そんなモンでやしねぇんだぞ!」

……この会話だけでも2人の力関係というのがよく分かる。
仲はとてもいいみたいだけど、女の人の方が強いみたい。

「ミルクならうちにいるウヤギから分けてもらえばいいでしょ。
 あ そういえば森にいるアシュケナードも今子育て中だし、話せば
 少しは分けてもらえるんじゃないかしら?」

「お気楽に言うなよ! まだコイツ首も座ってねぇのに、母親の
 お前が側にいなくてどうする!」

女の人は出かける気満々の様子で、男の人の言葉にも動じずニコニコと
笑っている。

「…身重の私をほったらかして、「島」に通っていたくせに・・・
 そういう事を言える立場?」

女の人の言葉に男の人の身体は硬直し、言葉を失ってしまった。
同時に後ろで鍋が噴いた音がして、男は慌てて鍋の前へと戻る。

「じゃ パンツを剥きに行ってきます。
 後の事はよろしくね〜」

女の人はそのままその場を立ち去り、家の中は僕と男の人だけに
なってしまった。
噴いた鍋を前に慌てて火の加減を見、時折背中の僕の様子を伺いながら
男の人は料理をつづけている。

「・・・全く どうしようもねぇ奴。
 お前だけは アイツに似てくれるなよ。男の子は母親に似るとか
 言うが…出来りゃ似て欲しくねぇやな。」

優しげなまなざしで僕を見て男の人はそう呟いた。

「お前達の子供だ。どちらにも似ているだろう。ニオからも様々な
 要素を継いでおるから、似て欲しくないと言うても・・・のぅ。」

しゃがれたような声が男の人の中から聞こえる。
この声は…「テラ」だ。僕に「ホルス」という名を与えてくれたテラ。
…そうか、テラはこの男の人と共にいる何かなんだ。


ここが僕の在るべき世界。
新たな生を授けられ、生きる世界。



+++++++++++++++++


キズナを抱いてウトウトとしている間に見た物。

今の僕にとってはあちらの方が夢なんじゃないかって気がする。
あと少しでこの世界が消えてしまうと分かっているのに…


キズナはすやすやと安心しきって眠っている。
周りに人が増え、殺伐とした空気が流れていても僕の側にいる時は
優しい顔で安らかな顔で・・・。
頼られ、必要とされる事がこんなに嬉しい事だとは思わなかった。
いいや 僕が竜だった時も彼女はそうしてくれていた。
お互いにとってなくてはならぬ相手だった。お互いが一緒にいたから
こそ強くなれた。安らぐ事が出来た。


何よりも大切な相手。




もう この世界だけでしか共にいる事は出来ないけれど・・・。



島のなくなるその日まで、精一杯の事をしよう。

最後の最後まで…
僕は貴女と一緒にいたい。

What's Going On



キズナが望むままに僕はキズナの身体に口づけた。
2人 月明かりの下で身体を重ねて、互いの体温を確かめあった。

ふと キズナの瞳の色が変わり、懐かしい眼差しになる。
いつも僕を見守ってくれていた、僕だけの 僕だけのヒト。

「…あはは、良い男になったじゃないか、ぱいろん…。」

ゆんまおだ。魂の中にある僅かな欠片が、表に出てきたのだろう。
これを知ったら、またアルシンハは「あり得ない」と苦笑いして
しまうに違いない。

「この記憶は私の片隅に残っているもの、これが本当に「私自身」
 のものか、そして私自身「私が誰なのか」はわからないけど…
 でも、あんたのことはわかる。はっきりとわかるよ…

 だからちょっとの間だけで良い、抱きしめさせて…」

ゆんまおは優しく手を差し伸べて、僕を抱きしめる。
昔と同じに、力強く、そして優しく激しく・・・。
僕も懐かしくて同じように抱きしめる。あの時の僕はゆんまおをこうして
抱きしめたくとも抱きしめられなかったから…。懐かしい気配、誰よりも
大切なヒトの魂に触れて、僕は涙が止まらなかった。


「この子」は、私が罪を償う輪廻の無限連鎖の中のひとつの可能性。
 体と意識はこの子のもんだ、だから私はまた還らなきゃいけない。
 今は無理矢理外に出てきただけだからね…」

 ありがとう、ぱいろん。またこの「生」のどこかで…。
 きっと…きっと逢えるよ…」

そっと僕に優しくキスをして、悲しそうに微笑んでゆんまおはまた消えて
しまった。魂の奥底で眠りにつく為に・・・。



泣いている僕を見てキズナはビックリした顔をしていた。
慌てて僕は涙を拭いてキズナを抱きしめた。


キズナとして転生した先での事をキズナは僕に話してくれた。
誰からも必要とされなかった。親も周りの者も誰1人としてキズナに優しい
言葉をかけなかった。やっと出来たと思った友達にも裏切られて・・・

キズナの心はたくさん傷ついていた。
ただキズナは「誰かと共にいたい」だけなのに。
「誰かに必要とされたい」だけなのに。
理を犯した罪を償う為にヒトにとって一番大切で、心の拠り所となる
モノを奪われたキズナ。

一度目の転生で、こんなにも心を黒いモノに支配されかけている。
これが償いなのか?
闇に墜ちて悪鬼となる事が償いだというのか?


誰がそんな事を決める事が出来る?
キズナは自分の快楽の為に墜ちた訳でもなんでもない。
「愛するが故」に心が壊れたのだとアルシンハは言っていた。

原因は僕。

ゆんまお1人の罪なんかじゃない。 なのに・・・。


泣き疲れて僕の腕の中でキズナが眠っている。
その頭を撫でながら、僕は考えていた。

・・・誰がヒトの罪を裁くのか という事を。






島は増々狭くなり、残った僅かな大地にヒトが集まっている。
前と違い、ヒトと闘う事を避ける事はもう出来ない。

残された時間は少ない。

僕がキズナの側にいる事の出来る時間も…。

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