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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 04/27/09:06

消える紅い島・夢の終わり


人との最後の闘いは勝つ事が出来なかった。
あまりにも強い相手。
なす術もなくマナを奪われ、僕たちは倒れる。

それでも残ったマナの力で立ち上がり、本当に最後となる闘いが始まった。

対峙するのは炎に属する妖異。
妖異の繰り出す紅の炎に照らされながら僕たちは闘う。

リョウコの華麗な弓技を繰り出す勇姿、キズナを慕う獣達の跳ぶ姿・・・
そして、昔の時のように闘いに真っ直ぐな瞳をして立ち向かうキズナの姿。
その姿を忘れないように心に焼き付けよう。 夢の一時でも僕にとっては
大切な20日間。現実と同じぐらい大切な時間だった。
決して 忘れない。


「二人とも今日でお別れね。今まで楽しかったわ。」

闘いの後、リョウコがそう言って僕たちに手を差し出してくれた。
僕もキズナもリョウコの手の上に手を重ねる。

「忘れません。アナタの強さとその優しさ。
 そして、また何処かで出会えたら…その時はまた今のように共に。」

「どうか、お元気で。また、その日が来たら…会いましょう!」

その言葉を聞いてリョウコさんは静かに微笑んで…片手を上げながらゆっくり
と何処かへ歩いて行った。


残された僕たちは紅い空を見上げる。

「ホルス… もし、これでこの世界から私達が消えて… 
 この世界が見る夢が覚めたとしても… わたし忘れないよ。

 ホルスの事、ホルスが私を愛してくれた事、私がホルスを愛した事
 ホルスと一つになった夜、痛みも喜びも、その時の風の匂いも、
 空の星座の形も

 もし、これが永遠…の、おわか、れ…になっても、忘れない…」

キズナの声は震えていた。
必死に何かを堪えているかのように。

「それに、私は強くなった。ホルスとリョウコさんに色んな物を貰って、
 強くなったよ。
 だから、今日が最後でも泣かない。もしその時がきたら笑ってこう言うよ

 「またね!」って…」

そう言って笑顔を向けてキズナは僕を見る。笑いながらもその両の瞳からは
涙が溢れていた。僕はそっとキズナを抱きしめる。

「絶対に忘れない。この20日間の事もキズナの事も。忘れるものか。
 そして、キズナに知っていて欲しい。僕の真実の名前。

 僕の名前は…"シオン・ホルス・クサナギ" これが今の僕の真実の名だ。」

昨日まで思い出せなかった僕の今の本当の名前。
この島では誰も知らない僕の真名。キズナにだけは知って欲しかった。

「交差する事のない世界で僕たちは生きて行かなければならない…
 現実の僕はまだ何の力も持たない赤子だけど、大人になったら…

 必ずキズナを捜す。貴女と会える方法をどんな事をしてでも探し出す。
 それが理を犯す行為だとしても。

 もう一度 キズナと出会う為に。」

そう言ってキズナの涙を指ですくった後、口づけをする。

「だから 悲しい顔をして泣かないで。
 だから…忘れないで 僕の事。 そして僕の名を呼んで。
 その声を頼りに僕はキズナを捜すから。会いに行くから。


 ・・・2人だけの約束。」

泣きそうになる気持ちを抑えて、僕は右手の小指をキズナに差し出した。
キズナも涙を手で拭って僕の顔を真剣なまなざしで見つめる。

20日目の2人


何処からか声が聞こえた。
この島にいる誰もが皆 この声を聞いたに違いない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  これは 誰 の夢?


  長い 長い 夢の終わり。



  もうすぐ 朝 が来る。







  さようなら。


  いつかまた訪れる 夜 まで・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何もかもが消えて行く。
島に居た人達も、この島も。

何もかもが白い光に飲み込まれて、目の前から消えた。



泣きながら笑って僕を見ていたキズナも・・・。

最後にキズナの唇が動いた。 
キズナは僕に何かを言っていたのに、





・・・僕はそれを聞く事が出来なかった。


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