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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 04/30/02:21

1つの希望

僕の両親は只人ではない。
カルマートに昔あった竜の国を護っていた竜の魂を宿した「竜人」だ。

その為、父さんの根城である屋敷にはたくさんの本が所蔵されている。
今はない国の本、遠い国の本、失われた魔法の本。人以外の種族が記した本…。
色んな知識を得るにはもってこいの環境が、僕には与えられていた。


赤子の時に見たあの夢。

紅い島で短い間一緒に居た人達。 何よりも誰よりも大切な人…。
忘れた事はない。忘れられない。理由等わからないけれど、あの人は
僕だけの人。僕だけのパートナー。
小さくて、寂しがりやで、泣き虫で…けれど芯の強い可愛い人。


僕の夢の話を聞いて、一番驚いていたのはカレン姉さんだった。

「・・・その島って、私が行っていた島と同じ法則じゃない。
 怪物も…同じだわ。」

僕が生まれた頃に姉さんが冒険していた島と、あの紅い島はとても
良く似ていたのだ。生息するモンスター、夢の中で得た僕の技能も全く
同じなのだと姉さんは言っていた。

「ああ そういえば、島の冒険者の中にも「紅い島」の夢を見て
 いたって人・・・何人かいたっけなぁ。
 あ セレナさんがそんな事を言ってたような気がする…。」

その島はきっと あの紅い島に近い場所にあるのだろう。
一度行ってみたい… 行けば何かが掴めるかもしれない。そして
あの人を見つけられるかもしれない。


僕の話はペレやテラ、両親も冗談半分で聞いていて真剣に聞いては
くれない。赤子の時の夢の話だから。あり得ぬ世界の話だから。

ただカレン姉さんだけは真剣に聞いてくれた。

「あの島はとても不思議な所だったから。
 島に集まる人達も随分変わっていたのよ。異世界と呼ばれる時間軸や
 存在する次元の違う所からも人が集まっていたもの。

 シオンが見た場所も本当にあったんじゃない?」

笑いながら姉さんは一緒に書庫での資料探しに付き合ってくれた。


「それに・・・大切な人なんでしょう? そのキズナって子。
 例え夢でも、そうやって巡り会えたのなら縁はあると思うの。

 頑張りなさい。 今度その子を見つけた時は…
 その手を離さないようにね。」


僕と同じ半竜人。
姉さんも"パートナー"については色々と苦労があったんだろう。
そのせいなのか、家に帰ってきた時はいつも僕の相談にのってくれた。




13になった時、僕はグインズギルドに登録をして冒険者となった。
まだカルマートの外へ出るのは早いだろうけど、いつか冒険者として1人立ち
出来たなら・・・あの島へと。必ず。


あの約束を果たす為に。


+++++++++++++++

ギルドに入った日の夜、夢を見た。

何も無い闇の中に、ちょこんと1人の老人が座っている。

「・・・お前も諦めが悪いと言うか一本気と言うか…。
 困った奴じゃな。」

苦笑いをしながら僕を見ていた。
誰だろう? 見た事のない人。不思議そうな顔をして老人を見ていると

「ああ 前の記憶はスッキリと消えとるんじゃったな。
 え〜 今の名はホルスだったか?」

「・・・半分当たり。僕はシオン・ホルス・クサナギだよ。
 その名で呼ばれていたのは、あの夢の中でだけ・・・

 って! 爺さん 何か知っているのか?」

紅い島で呼ばれていた名を言われてビックリする。

「……まぁな。お前があの島にいた事、あの島である娘と巡り会った事も
 知っておる。」

その言葉を聞いて、僕はいても立ってもいられなくなって爺さんに
詰め寄って尋ねた。

「キズナは…キズナは生きているの? ね 無事でいるの?!」

僕を見て半分困った顔をして爺さんは髭を撫でながら呟いた。

「やれやれ、夢の事は前世と関係がない故に…覚えておったか。
 赤子の夢だと思うておったが・・・
 それ程までに…お前とあの娘の絆はとても深いのじゃな。」

頭をかしげ、1つ息を吐いてから爺さんは言葉を続けた。

「お前の覚悟はあの島で見せてもらった。
 本来、こういう事を教えるのはイカン事だが、まぁあの娘はわしの愛弟子
 でもあるし・・・特別サービスじゃ。

 あの娘は生きておる。
 流転した先で犯した罪を償う為に、在るべき世界では眠り続けている。

 だが あの娘は夢を渡る事を覚えた。 あの島でお前と出会った事で
 お前を探し求めて夢を渡り歩いておるのだ。」

キズナが生きている! それだけでも僕は嬉しくて…。
 
「夢を渡る力がお前にも多少はあるようじゃ。
 たくさん折り重なり存在する夢の世界で、あの娘と出会う確率は低い・・・
 それでも…」

「それでも出会えるなら、僕は探す。キズナを探してみせる!」

爺さんに一礼して 僕は走り出した。 現実で出会えなくても・・・
夢でも構わない。

++++++++++++++



必ず 僕は貴女を捜し出して…許される限り貴女の側にいよう。


それが約束。
僕がキズナとあの島で最後にした




2人だけの約束。

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失った記憶・残された記憶

赤子は火のついたように泣いていた。
何かを求めるかのように、何かを後悔するかのように、
何かを悲しむかのように・・・。

宥めても、何をしても赤子は決して泣き止まなかった。

「あ〜っ! もう! 何なんだよ!」

赤子を抱いている男は困惑しきっていた。
何しろ原因が思いつかない。ミルクも飲ませた、おしめも替えたばかり、
それまでは大人しくしていた赤子の変貌ぶりに、心底困り果てていたのだ。

「何か 病気にでもなっちまったのか?
 だと したらちょっと厄介だ。人としての病なのか竜としての病なのか…」

「見た所 病に蝕まれている訳では無さそうじゃが…
 こう 何か違う部分でのナニかというか・・・」

男と共生しているモノも困惑した様子で男に語りかけている。


*********************

何もない闇の中で、ホルスは泣き叫んでいた。

最後のキズナの言葉を聞く事の出来なかった自分が情けなくて。
もう2度と会えぬキズナを想って。

島では平静を装ってはいたものの「喪失」への恐怖に耐えきれず・・・。
 

「世話の焼ける奴じゃのぅ。
 もう少しお前さんはしっかりしとると思っとったが・・・」

闇の中から白いひげを蓄えた老人が現れて、ホルスを見つめている。
半ば呆れた顔をしてホルスの前に歩み寄り、ホルスに語りかけた。

「まぁ お前さんとあの娘の縁は随分と深く結ばれとるのはよう分かった。
 それ程までに互いが互いを好いとる気持ちもな。

 じゃが…
 前の…前世の記憶を持つ事は許されんのじゃよ。
 悪いが、お前さんからその記憶を消させてもらうぞ。」

「嫌だ! 忘れたくない! もう失うのは嫌だ!」


アルシンハから逃げようとホルスは走り出した。
アルシンハは杖をかざして口の中で何やら呪文を唱え、それと同時に杖から蔓が
放たれる。蔦はホルスの足に絡み付いてホルスの動きを封じた。
その場に倒れてしまったホルスは、子供のように泣きじゃくりずっと呟き続けて
いる。

「お願いだから…もうこれ以上奪わないでくれ。
 あの人にもう2度と会えないのに…せめて思い出だけでも…」


「その思い出を持つ事は許されぬのだ。
 持てば 現世でのお主に障りが出てしまう。そうなれば、2度とあの娘とも
 出会えぬぞ。 もう2度とな。」

アルシンハは持っていた杖をホルスの額にかざし、小さな声で呪文を唱えた。
その呪文とともに杖は仄かに光を発し、ホルスの顔を照らす。

「…わ 忘れたく ない…。 き キズナ…の 事…」

そのままホルスは意識を失い、闇の中にその身が飲み込まれていく。
闇の中にはアルシンハ1人が残されていた。

「やれやれ 全く なかなかに手のかかる連中だ。」

杖を持ち直し、ヒゲを一撫ですると老人はゆっくりと歩いて…そのまま
闇の中へと姿を消した。




「… ま どうなるかは 2人次第じゃろうて・・・。」

*********************


♪生まれた 生まれた 何が生まれた
 星がひとつ 暗い宇宙に 生まれた
 星には 夜があり そして 朝が訪れた

 何にもない 大地に ただ風が 吹いてた
 吹いてた 吹いてた……
 

丸一昼夜、泣いていた赤子を抱いて様子を見ていた男は、居間のクッションの
上でぐんにゃりしながら小さな声で子守唄を歌っていた。
腕の中には、ようやく泣き止んで眠っている赤子がいる。

「・・・・・・や〜っと 落ち着いてくれたか。」

大きな溜め息をつき、憔悴しきった顔をして自分の腕の中で眠る赤子を
優しい瞳で見つめながら、静かにその頭を撫でる。

「心配かけさせやがって、こういう手のかかるトコはニオにそっくりだ。
 ・・・カレンの奴は全然手がかかんなかったんだけどなぁ…。」

男は大アクビをして赤子を抱いたままクッションの上にのびてしまい、
そして そのまま赤子と同じように眠りについた。




■6年後■

6年の月日が経った。
赤子…シオンは大きな病気をする事もなく、父母の元で健やかに育っていた。
子供らしく、やんちゃで悪戯好きで…

けれども他の子供とは違う面も持っていた。

外で遊ぶ事も好きな子供だったけれど、それよりも本を読む事に時間を費やして
気がつくと屋敷の書庫に籠って何日も出て来ない事。


カルマートから出た事がないのに、カルマート以外の土地の事を知っている事。


石炭のクレヨンで紙に描くのは、見た事のない怪物、見た事のない土地の風景。
カルマートでは見た事のない衣服を着た人間の絵。
それを見る度に両親は不思議な顔をした。
この子は何処でこんな物を見たというのか? 

でもそれは本で見た物なのだろう。
きっとこの子は想像力が強いのだ そう両親は思っていた。


ある日、家を出ていた娘が帰ってきた。

「カレン・ヌゥト・クサナギ」

シオンの姉、剣士として長く外の国へと冒険に出ていた娘。
シオンの絵を見て一番驚いたのは彼女だった。

「! な なんでシオンが、あの島のモンスターを知っているの?」

カレンは不思議に思いながらも、弟シオンの話を丁寧に聞き弟の問いにも
丁寧に答える。

「これは…偽妖精ね。 シオン あんたこれと闘ったの?
 攻撃を避けまくる嫌な奴だったでしょう?」

シオンもまた姉がこの島の事を知っていると聞いて、姉に様々な質問を
投げかけ、姉の質問に嬉しそうに答えた。

「島は とてもヘンな所だったよ。空が紅くて…火は蒼かった。
 それでね。日にちが経つと、どんどん狭くなったの。

 僕は剣と格闘武器で闘って…サムライっていう力を使えるようになった。
 風と地の力も借りたし…
 武器を作るのと、物と物をくっつける技も使ったかな。」

完全に一致するモンスターと島の法則、そして技能。
カレンはシオンが島に来ていた事は事実だと確信した。不可思議な法則の
ある島だった。招かれていた者達も不可思議な所から来た者達ばかりだった。
言葉では説明出来ないけれど、シオンが体験したと言っている事も
"事実ではない"とは決して言えない。

「父さんと母さんにとっては「夢物語」としか思えないかもしれないけど、
 多分…シオンの言ってる事 ホントの事だと思うわ。
 あんまり軽くあしらわないでやってね。」



シオンが描く絵の中で、一番たくさん描かれていたのは眼鏡をかけた少女の絵。
見た事のない異国の服を来て、獣を従える少女・・・。

「・・・これは誰?」

カレンは不思議そうな顔をして尋ねる。
その質問に、シオンは嬉しそうに笑って答えた。





「この人はキズナ。 

 僕の一番大切な人。 僕だけの人。」



消える紅い島・夢の終わり


人との最後の闘いは勝つ事が出来なかった。
あまりにも強い相手。
なす術もなくマナを奪われ、僕たちは倒れる。

それでも残ったマナの力で立ち上がり、本当に最後となる闘いが始まった。

対峙するのは炎に属する妖異。
妖異の繰り出す紅の炎に照らされながら僕たちは闘う。

リョウコの華麗な弓技を繰り出す勇姿、キズナを慕う獣達の跳ぶ姿・・・
そして、昔の時のように闘いに真っ直ぐな瞳をして立ち向かうキズナの姿。
その姿を忘れないように心に焼き付けよう。 夢の一時でも僕にとっては
大切な20日間。現実と同じぐらい大切な時間だった。
決して 忘れない。


「二人とも今日でお別れね。今まで楽しかったわ。」

闘いの後、リョウコがそう言って僕たちに手を差し出してくれた。
僕もキズナもリョウコの手の上に手を重ねる。

「忘れません。アナタの強さとその優しさ。
 そして、また何処かで出会えたら…その時はまた今のように共に。」

「どうか、お元気で。また、その日が来たら…会いましょう!」

その言葉を聞いてリョウコさんは静かに微笑んで…片手を上げながらゆっくり
と何処かへ歩いて行った。


残された僕たちは紅い空を見上げる。

「ホルス… もし、これでこの世界から私達が消えて… 
 この世界が見る夢が覚めたとしても… わたし忘れないよ。

 ホルスの事、ホルスが私を愛してくれた事、私がホルスを愛した事
 ホルスと一つになった夜、痛みも喜びも、その時の風の匂いも、
 空の星座の形も

 もし、これが永遠…の、おわか、れ…になっても、忘れない…」

キズナの声は震えていた。
必死に何かを堪えているかのように。

「それに、私は強くなった。ホルスとリョウコさんに色んな物を貰って、
 強くなったよ。
 だから、今日が最後でも泣かない。もしその時がきたら笑ってこう言うよ

 「またね!」って…」

そう言って笑顔を向けてキズナは僕を見る。笑いながらもその両の瞳からは
涙が溢れていた。僕はそっとキズナを抱きしめる。

「絶対に忘れない。この20日間の事もキズナの事も。忘れるものか。
 そして、キズナに知っていて欲しい。僕の真実の名前。

 僕の名前は…"シオン・ホルス・クサナギ" これが今の僕の真実の名だ。」

昨日まで思い出せなかった僕の今の本当の名前。
この島では誰も知らない僕の真名。キズナにだけは知って欲しかった。

「交差する事のない世界で僕たちは生きて行かなければならない…
 現実の僕はまだ何の力も持たない赤子だけど、大人になったら…

 必ずキズナを捜す。貴女と会える方法をどんな事をしてでも探し出す。
 それが理を犯す行為だとしても。

 もう一度 キズナと出会う為に。」

そう言ってキズナの涙を指ですくった後、口づけをする。

「だから 悲しい顔をして泣かないで。
 だから…忘れないで 僕の事。 そして僕の名を呼んで。
 その声を頼りに僕はキズナを捜すから。会いに行くから。


 ・・・2人だけの約束。」

泣きそうになる気持ちを抑えて、僕は右手の小指をキズナに差し出した。
キズナも涙を手で拭って僕の顔を真剣なまなざしで見つめる。

20日目の2人


何処からか声が聞こえた。
この島にいる誰もが皆 この声を聞いたに違いない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  これは 誰 の夢?


  長い 長い 夢の終わり。



  もうすぐ 朝 が来る。







  さようなら。


  いつかまた訪れる 夜 まで・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

何もかもが消えて行く。
島に居た人達も、この島も。

何もかもが白い光に飲み込まれて、目の前から消えた。



泣きながら笑って僕を見ていたキズナも・・・。

最後にキズナの唇が動いた。 
キズナは僕に何かを言っていたのに、





・・・僕はそれを聞く事が出来なかった。


お疲れさま。

本編の方が終焉を迎えましたね。
参加していた皆様、お疲れ様でした。

気軽に参加したつもりが、いつの間にか熱くなってしまい偽島よりもキャラに
入れ込んでしまう事になってしまいました。
ここまでホルスさんを引っぱって下さったのは、キズナさんです。
毎回によによとする萌え萌えメッセ。あまりに悲しい裏話にホルス自身も、
背後のワタクシも胸きゅんでした。
側にいる事で彼女の心が幸せになれるなら、彼女の側にいたいと 本気で思い
ました(痛い奴だ…)

まだ日記も全部ココにあげていないので、間にこういうコメント挟むのはナニ
かと思ったのですが(笑)

本編の日記は今日中に全て上げ、その後に最終日締めの日記と後日談を2つ
公開する予定です。
あまり結果を追っていた方はおられないとは思いますが、ここまで盛り上がった
己の萌え萌えハートを記録する為にこの場で色々補完する事にしました。
1人でも気にかけて読んでいて下さった方がいたと伺ったので・・・
頑張ってみます(笑)

絶対 後で「この時の自分に小1時間説教したい!」と思うだろうけど・・・。


ホルスの気持ちを受け止めて 毎回ステキな萌え攻撃を下さったキズナさん
背後の水無月さんに 両手一杯の感謝。
バカップルの暴走を横目に、受け流して見守ってくれていたリョウコさん
背後のプチさんにも大感謝です。

本当にありがとうございました。

赤い月の夢



少しずつ少しずつ崩壊する島。

島に捕われた者達を逃げられぬようにするかのごとく、海岸線だった所は
高く高く切り立った崖へと変化した。崖は少しずつ島を狭めて行く…。
その高さと、足がかりのない平坦な岩壁はまるで囚人を逃がさぬ檻のようだ。
砂地と疎らな草地、高い崖、小さな水場・・・。
今 この島にあるのはそれだけ。

崖に囲われた小さな空は、血のように紅い。
この島の空は紅く、炎は蒼い。
夜だけは蒼い帳で空は青紫へと変じる。それでも何処か紅い色を残して。


始めの頃、青白い光を大地へと投げかけていた月も、見上げると紅い月に
変わっていた。 崩壊への前触れ? それとも紅い夢の世界本来の色へと
戻ったのか・・・。


皆が知っている。
この島が明日で消えてしまう事。 勝っても負けても明日で全てが終わる。
ここにいる自分が消えてなくなってしまう事。

たった20日間。
それだけの時間で得た物、大切な人、大切な物、大切な絆・・・。
それが明日で全て無くなってしまうのだ。 喪失する恐怖が心を蝕む。



気がつくとキズナもリョウコもいなくなっていた。
焚き火の側に1人残されて、僕は不安にかられた。慌てて立ち上がり2人を
探す。蟲の声、風のざわめきの中から微かなキズナの声を拾い、辿る。
崖の向こうにある海の潮の香に紛れている、微かなキズナの匂いを辿る。

焚き火から少し離れた樹の下で、キズナとリョウコは座って話していた。
リョウコが僕に気付き、立ち上がり僕の方へと歩いてきて・・・
軽く僕の胸を叩く。

「後はアナタの領分ね。」

クスと小さく笑ってリョウコは焚き火の方へと去って行った。

キズナは樹の下に座って泣いていたのか、随分と泣きはらした顔で僕を見る。
不安なのは僕も同じ。 なぐさめようとそっとキズナに口づけた。




そのまま2人で互いを求める。
感じたい。今こうして近くにいる事。
こうして2人が1つになった事。誰よりもお互いを欲して想っている事。

忘れたくない。忘れないで欲しい。
だから僕もキズナも互いの身体を食むように、激しく求めて貪った。
僕は自分がキズナを忘れないように、キズナが僕を決して忘れないように
キズナの身体に印を刻む。
キズナも同じように僕の身体に印を刻む。 僕がキズナだけの物であると
いう印。


何度も何度も自分の中に打ち寄せる波に身を任せて、2人身体を重ねた。
最後の宴。もう2度とこうする事は叶わぬと知っているから・・・。

何度も何度も・・・。



紅い月だけが僕たちを見ていた。






忘れないで。キズナ。
貴女を大切に想う者がいた事。
貴女を愛している者がいる事。

夢の中の出来事だと、悲しまないで。


忘れないでいて。僕の事。僕の名前を。



そして 優しいその声で僕の名を呼んで。
僕はその声を頼りに いつか必ず貴女を捜して側に行くから。

過去も未来も、星座も越えて
貴女の元へと行こう。


もう一度 貴女を抱きしめる為に。
もう一度 貴女のその笑顔を見る為に・・・。


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