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1つの希望
僕の両親は只人ではない。
カルマートに昔あった竜の国を護っていた竜の魂を宿した「竜人」だ。
その為、父さんの根城である屋敷にはたくさんの本が所蔵されている。
今はない国の本、遠い国の本、失われた魔法の本。人以外の種族が記した本…。
色んな知識を得るにはもってこいの環境が、僕には与えられていた。
赤子の時に見たあの夢。
紅い島で短い間一緒に居た人達。 何よりも誰よりも大切な人…。
忘れた事はない。忘れられない。理由等わからないけれど、あの人は
僕だけの人。僕だけのパートナー。
小さくて、寂しがりやで、泣き虫で…けれど芯の強い可愛い人。
僕の夢の話を聞いて、一番驚いていたのはカレン姉さんだった。
「・・・その島って、私が行っていた島と同じ法則じゃない。
怪物も…同じだわ。」
僕が生まれた頃に姉さんが冒険していた島と、あの紅い島はとても
良く似ていたのだ。生息するモンスター、夢の中で得た僕の技能も全く
同じなのだと姉さんは言っていた。
「ああ そういえば、島の冒険者の中にも「紅い島」の夢を見て
いたって人・・・何人かいたっけなぁ。
あ セレナさんがそんな事を言ってたような気がする…。」
その島はきっと あの紅い島に近い場所にあるのだろう。
一度行ってみたい… 行けば何かが掴めるかもしれない。そして
あの人を見つけられるかもしれない。
僕の話はペレやテラ、両親も冗談半分で聞いていて真剣に聞いては
くれない。赤子の時の夢の話だから。あり得ぬ世界の話だから。
ただカレン姉さんだけは真剣に聞いてくれた。
「あの島はとても不思議な所だったから。
島に集まる人達も随分変わっていたのよ。異世界と呼ばれる時間軸や
存在する次元の違う所からも人が集まっていたもの。
シオンが見た場所も本当にあったんじゃない?」
笑いながら姉さんは一緒に書庫での資料探しに付き合ってくれた。
「それに・・・大切な人なんでしょう? そのキズナって子。
例え夢でも、そうやって巡り会えたのなら縁はあると思うの。
頑張りなさい。 今度その子を見つけた時は…
その手を離さないようにね。」
僕と同じ半竜人。
姉さんも"パートナー"については色々と苦労があったんだろう。
そのせいなのか、家に帰ってきた時はいつも僕の相談にのってくれた。
13になった時、僕はグインズギルドに登録をして冒険者となった。
まだカルマートの外へ出るのは早いだろうけど、いつか冒険者として1人立ち
出来たなら・・・あの島へと。必ず。
あの約束を果たす為に。
+++++++++++++++
ギルドに入った日の夜、夢を見た。
何も無い闇の中に、ちょこんと1人の老人が座っている。
「・・・お前も諦めが悪いと言うか一本気と言うか…。
困った奴じゃな。」
苦笑いをしながら僕を見ていた。
誰だろう? 見た事のない人。不思議そうな顔をして老人を見ていると
「ああ 前の記憶はスッキリと消えとるんじゃったな。
え〜 今の名はホルスだったか?」
「・・・半分当たり。僕はシオン・ホルス・クサナギだよ。
その名で呼ばれていたのは、あの夢の中でだけ・・・
って! 爺さん 何か知っているのか?」
紅い島で呼ばれていた名を言われてビックリする。
「……まぁな。お前があの島にいた事、あの島である娘と巡り会った事も
知っておる。」
その言葉を聞いて、僕はいても立ってもいられなくなって爺さんに
詰め寄って尋ねた。
「キズナは…キズナは生きているの? ね 無事でいるの?!」
僕を見て半分困った顔をして爺さんは髭を撫でながら呟いた。
「やれやれ、夢の事は前世と関係がない故に…覚えておったか。
赤子の夢だと思うておったが・・・
それ程までに…お前とあの娘の絆はとても深いのじゃな。」
頭をかしげ、1つ息を吐いてから爺さんは言葉を続けた。
「お前の覚悟はあの島で見せてもらった。
本来、こういう事を教えるのはイカン事だが、まぁあの娘はわしの愛弟子
でもあるし・・・特別サービスじゃ。
あの娘は生きておる。
流転した先で犯した罪を償う為に、在るべき世界では眠り続けている。
だが あの娘は夢を渡る事を覚えた。 あの島でお前と出会った事で
お前を探し求めて夢を渡り歩いておるのだ。」
キズナが生きている! それだけでも僕は嬉しくて…。
「夢を渡る力がお前にも多少はあるようじゃ。
たくさん折り重なり存在する夢の世界で、あの娘と出会う確率は低い・・・
それでも…」
「それでも出会えるなら、僕は探す。キズナを探してみせる!」
爺さんに一礼して 僕は走り出した。 現実で出会えなくても・・・
夢でも構わない。
++++++++++++++
必ず 僕は貴女を捜し出して…許される限り貴女の側にいよう。
それが約束。
僕がキズナとあの島で最後にした
2人だけの約束。
カルマートに昔あった竜の国を護っていた竜の魂を宿した「竜人」だ。
その為、父さんの根城である屋敷にはたくさんの本が所蔵されている。
今はない国の本、遠い国の本、失われた魔法の本。人以外の種族が記した本…。
色んな知識を得るにはもってこいの環境が、僕には与えられていた。
赤子の時に見たあの夢。
紅い島で短い間一緒に居た人達。 何よりも誰よりも大切な人…。
忘れた事はない。忘れられない。理由等わからないけれど、あの人は
僕だけの人。僕だけのパートナー。
小さくて、寂しがりやで、泣き虫で…けれど芯の強い可愛い人。
僕の夢の話を聞いて、一番驚いていたのはカレン姉さんだった。
「・・・その島って、私が行っていた島と同じ法則じゃない。
怪物も…同じだわ。」
僕が生まれた頃に姉さんが冒険していた島と、あの紅い島はとても
良く似ていたのだ。生息するモンスター、夢の中で得た僕の技能も全く
同じなのだと姉さんは言っていた。
「ああ そういえば、島の冒険者の中にも「紅い島」の夢を見て
いたって人・・・何人かいたっけなぁ。
あ セレナさんがそんな事を言ってたような気がする…。」
その島はきっと あの紅い島に近い場所にあるのだろう。
一度行ってみたい… 行けば何かが掴めるかもしれない。そして
あの人を見つけられるかもしれない。
僕の話はペレやテラ、両親も冗談半分で聞いていて真剣に聞いては
くれない。赤子の時の夢の話だから。あり得ぬ世界の話だから。
ただカレン姉さんだけは真剣に聞いてくれた。
「あの島はとても不思議な所だったから。
島に集まる人達も随分変わっていたのよ。異世界と呼ばれる時間軸や
存在する次元の違う所からも人が集まっていたもの。
シオンが見た場所も本当にあったんじゃない?」
笑いながら姉さんは一緒に書庫での資料探しに付き合ってくれた。
「それに・・・大切な人なんでしょう? そのキズナって子。
例え夢でも、そうやって巡り会えたのなら縁はあると思うの。
頑張りなさい。 今度その子を見つけた時は…
その手を離さないようにね。」
僕と同じ半竜人。
姉さんも"パートナー"については色々と苦労があったんだろう。
そのせいなのか、家に帰ってきた時はいつも僕の相談にのってくれた。
13になった時、僕はグインズギルドに登録をして冒険者となった。
まだカルマートの外へ出るのは早いだろうけど、いつか冒険者として1人立ち
出来たなら・・・あの島へと。必ず。
あの約束を果たす為に。
+++++++++++++++
ギルドに入った日の夜、夢を見た。
何も無い闇の中に、ちょこんと1人の老人が座っている。
「・・・お前も諦めが悪いと言うか一本気と言うか…。
困った奴じゃな。」
苦笑いをしながら僕を見ていた。
誰だろう? 見た事のない人。不思議そうな顔をして老人を見ていると
「ああ 前の記憶はスッキリと消えとるんじゃったな。
え〜 今の名はホルスだったか?」
「・・・半分当たり。僕はシオン・ホルス・クサナギだよ。
その名で呼ばれていたのは、あの夢の中でだけ・・・
って! 爺さん 何か知っているのか?」
紅い島で呼ばれていた名を言われてビックリする。
「……まぁな。お前があの島にいた事、あの島である娘と巡り会った事も
知っておる。」
その言葉を聞いて、僕はいても立ってもいられなくなって爺さんに
詰め寄って尋ねた。
「キズナは…キズナは生きているの? ね 無事でいるの?!」
僕を見て半分困った顔をして爺さんは髭を撫でながら呟いた。
「やれやれ、夢の事は前世と関係がない故に…覚えておったか。
赤子の夢だと思うておったが・・・
それ程までに…お前とあの娘の絆はとても深いのじゃな。」
頭をかしげ、1つ息を吐いてから爺さんは言葉を続けた。
「お前の覚悟はあの島で見せてもらった。
本来、こういう事を教えるのはイカン事だが、まぁあの娘はわしの愛弟子
でもあるし・・・特別サービスじゃ。
あの娘は生きておる。
流転した先で犯した罪を償う為に、在るべき世界では眠り続けている。
だが あの娘は夢を渡る事を覚えた。 あの島でお前と出会った事で
お前を探し求めて夢を渡り歩いておるのだ。」
キズナが生きている! それだけでも僕は嬉しくて…。
「夢を渡る力がお前にも多少はあるようじゃ。
たくさん折り重なり存在する夢の世界で、あの娘と出会う確率は低い・・・
それでも…」
「それでも出会えるなら、僕は探す。キズナを探してみせる!」
爺さんに一礼して 僕は走り出した。 現実で出会えなくても・・・
夢でも構わない。
++++++++++++++
必ず 僕は貴女を捜し出して…許される限り貴女の側にいよう。
それが約束。
僕がキズナとあの島で最後にした
2人だけの約束。
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