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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 03/30/00:59

星空の下で


僕たちは何とか生き延びていた。
久しぶりに闘った人達とは勝敗がつかず、引き分けとなって互いが
マナを失う事もなく・・・。
今日はまた違う人達と闘い、ボロボロになりながらも僕たちが勝って
相手からマナを奪った。
今 僕たちのいるエリアにはたくさんの人がいるけれど、3人で組んで
いる人達はあまりいなかったらしい。明日は誰かと闘う事もなくて済む
と、キズナが言った。


島の怪物の強さも最初の頃より強くなって、闘う度に傷だらけになる。
それでも…何とか今日も勝ち進んで僕たちはここにいる。




夜の帳が降りて、島が蒼い闇に包まれる時間。

キズナは僕の望みを受け入れてくれた。
竜だった頃から、僕がずっと心の何処かで望んでいた事。

彼女を僕だけの物にする事。


互いを求め、互いがその身を貪る。
本能が導くままに、己の感情が求めるままに・・・。
何もかもが溶けて1つになってしまうかのような感覚。身体も頭の芯
も熱くなって、与えられる快楽を2人でただ求めた。

この時間が永遠に続けばいい。そんな事を思いながら。


18日目の2人


月が傾きかけ、狂宴の一時は終わり・・・。
キズナはぐったりして僕の腕の中で眠っている。


「わたし、生まれてから初めてなの。
 誰かに必要とされたの…。」

2日前、キズナは僕にそう言って泣いた。
そして僕の事が好きだと。そう言ってくれた。
ずっと一緒にいたいと。

本当の僕たちが在るべき世界は、多分本来交わる事のない遠い世界
なんだろう。たった20日間、この僅かな時間が僕たちに与えられた
共にいる事の出来る時間。


常に側にいる事は出来なくても、傷ついたキズナを支える為に何か
僕に出来る事はないのだろうか?




テラとペレが言っていた「神」という存在が本当にあるのなら・・・
僕は願いたい。


「どうか…キズナを…
 キズナの心を救って」


ただそれだけを。

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僕の在るべき場所


+++++++++++++++++

良い匂いがする。
料理の匂いだろうか? 匂いが気になって目を開ける。

僕は大きな背中に背負われていた。
濃い茶色の髪、耳には金色の珥堕。随分と大きな男の人が僕を背負って
鍋の前で何やら作業をしている。

「シュラ、じゃあ 後の事はお願いしていいわよね?」

後ろから女の人の声がする。
いつも僕が聞いていた歌と同じ声・・・。

男の人は鍋から離れて、声のする方へと移動した。
居間…だろうか? そこには冒険装備を纏った黒い髪、紅い瞳の女の人
が立ってこちらを見ていた。
大きくて強い瞳の・・・。

「おい! ニオ! まさかお前全部オレに押し付けて・・・
 探索に出るってんじゃないだろうな?」

男の人は少し情けない声を出して女の人に話しかけている。

「探索に出たら1日どころか何日もかかるだろ!
 その間のシオンのミルクとかど〜すんだよ! オレの乳からは
 そんなモンでやしねぇんだぞ!」

……この会話だけでも2人の力関係というのがよく分かる。
仲はとてもいいみたいだけど、女の人の方が強いみたい。

「ミルクならうちにいるウヤギから分けてもらえばいいでしょ。
 あ そういえば森にいるアシュケナードも今子育て中だし、話せば
 少しは分けてもらえるんじゃないかしら?」

「お気楽に言うなよ! まだコイツ首も座ってねぇのに、母親の
 お前が側にいなくてどうする!」

女の人は出かける気満々の様子で、男の人の言葉にも動じずニコニコと
笑っている。

「…身重の私をほったらかして、「島」に通っていたくせに・・・
 そういう事を言える立場?」

女の人の言葉に男の人の身体は硬直し、言葉を失ってしまった。
同時に後ろで鍋が噴いた音がして、男は慌てて鍋の前へと戻る。

「じゃ パンツを剥きに行ってきます。
 後の事はよろしくね〜」

女の人はそのままその場を立ち去り、家の中は僕と男の人だけに
なってしまった。
噴いた鍋を前に慌てて火の加減を見、時折背中の僕の様子を伺いながら
男の人は料理をつづけている。

「・・・全く どうしようもねぇ奴。
 お前だけは アイツに似てくれるなよ。男の子は母親に似るとか
 言うが…出来りゃ似て欲しくねぇやな。」

優しげなまなざしで僕を見て男の人はそう呟いた。

「お前達の子供だ。どちらにも似ているだろう。ニオからも様々な
 要素を継いでおるから、似て欲しくないと言うても・・・のぅ。」

しゃがれたような声が男の人の中から聞こえる。
この声は…「テラ」だ。僕に「ホルス」という名を与えてくれたテラ。
…そうか、テラはこの男の人と共にいる何かなんだ。


ここが僕の在るべき世界。
新たな生を授けられ、生きる世界。



+++++++++++++++++


キズナを抱いてウトウトとしている間に見た物。

今の僕にとってはあちらの方が夢なんじゃないかって気がする。
あと少しでこの世界が消えてしまうと分かっているのに…


キズナはすやすやと安心しきって眠っている。
周りに人が増え、殺伐とした空気が流れていても僕の側にいる時は
優しい顔で安らかな顔で・・・。
頼られ、必要とされる事がこんなに嬉しい事だとは思わなかった。
いいや 僕が竜だった時も彼女はそうしてくれていた。
お互いにとってなくてはならぬ相手だった。お互いが一緒にいたから
こそ強くなれた。安らぐ事が出来た。


何よりも大切な相手。




もう この世界だけでしか共にいる事は出来ないけれど・・・。



島のなくなるその日まで、精一杯の事をしよう。

最後の最後まで…
僕は貴女と一緒にいたい。

What's Going On



キズナが望むままに僕はキズナの身体に口づけた。
2人 月明かりの下で身体を重ねて、互いの体温を確かめあった。

ふと キズナの瞳の色が変わり、懐かしい眼差しになる。
いつも僕を見守ってくれていた、僕だけの 僕だけのヒト。

「…あはは、良い男になったじゃないか、ぱいろん…。」

ゆんまおだ。魂の中にある僅かな欠片が、表に出てきたのだろう。
これを知ったら、またアルシンハは「あり得ない」と苦笑いして
しまうに違いない。

「この記憶は私の片隅に残っているもの、これが本当に「私自身」
 のものか、そして私自身「私が誰なのか」はわからないけど…
 でも、あんたのことはわかる。はっきりとわかるよ…

 だからちょっとの間だけで良い、抱きしめさせて…」

ゆんまおは優しく手を差し伸べて、僕を抱きしめる。
昔と同じに、力強く、そして優しく激しく・・・。
僕も懐かしくて同じように抱きしめる。あの時の僕はゆんまおをこうして
抱きしめたくとも抱きしめられなかったから…。懐かしい気配、誰よりも
大切なヒトの魂に触れて、僕は涙が止まらなかった。


「この子」は、私が罪を償う輪廻の無限連鎖の中のひとつの可能性。
 体と意識はこの子のもんだ、だから私はまた還らなきゃいけない。
 今は無理矢理外に出てきただけだからね…」

 ありがとう、ぱいろん。またこの「生」のどこかで…。
 きっと…きっと逢えるよ…」

そっと僕に優しくキスをして、悲しそうに微笑んでゆんまおはまた消えて
しまった。魂の奥底で眠りにつく為に・・・。



泣いている僕を見てキズナはビックリした顔をしていた。
慌てて僕は涙を拭いてキズナを抱きしめた。


キズナとして転生した先での事をキズナは僕に話してくれた。
誰からも必要とされなかった。親も周りの者も誰1人としてキズナに優しい
言葉をかけなかった。やっと出来たと思った友達にも裏切られて・・・

キズナの心はたくさん傷ついていた。
ただキズナは「誰かと共にいたい」だけなのに。
「誰かに必要とされたい」だけなのに。
理を犯した罪を償う為にヒトにとって一番大切で、心の拠り所となる
モノを奪われたキズナ。

一度目の転生で、こんなにも心を黒いモノに支配されかけている。
これが償いなのか?
闇に墜ちて悪鬼となる事が償いだというのか?


誰がそんな事を決める事が出来る?
キズナは自分の快楽の為に墜ちた訳でもなんでもない。
「愛するが故」に心が壊れたのだとアルシンハは言っていた。

原因は僕。

ゆんまお1人の罪なんかじゃない。 なのに・・・。


泣き疲れて僕の腕の中でキズナが眠っている。
その頭を撫でながら、僕は考えていた。

・・・誰がヒトの罪を裁くのか という事を。






島は増々狭くなり、残った僅かな大地にヒトが集まっている。
前と違い、ヒトと闘う事を避ける事はもう出来ない。

残された時間は少ない。

僕がキズナの側にいる事の出来る時間も…。

15日目の2人


バタバタしていてアップしそびれていた落書きをペタリ。

初めてのチュ〜

15日目にメッセのやりとりであった1シーン。
キズナさんったらもう…積極的なんだから! と更新結果を見てにまにまと
しておりました。


が!
キズナさんはこの後…
すんません。若い娘の行動力舐めてました(嘘)

先生! あの日記は本当に大丈夫なんでしょうか?
ちょっとワタクシ読んで(以下自主規制)

キズナの望む事


月明かりの下で、キズナが纏っていた衣服を脱いだ。
白い肌に残る傷跡。
その身体をキズナは「汚れている」と悲しそうな顔をして言った。

汚れてなんかいないのに。
とても綺麗な身体なのに。
どうしてキズナはそんなことを言うのだろう?

「どす黒く汚れた私は、すなわち魔物と同じで、
 いつ狂ってしまうか分からない」

「だから、ホルスの綺麗な心で私を救って…、
 私のこの体をどうか…ホルスの唇で浄めて欲しいの…」

キズナが僕を見てそう言った。


傷ついた魂、傷ついたキズナ。
罪を償う為に与えられた罰の重さに、叶わなかった己の願いに。

こうして僕が手を差し伸べて、共にいる事も理に反しているのかも知れ
ない。でも こうして巡り会えたのなら・・・。
一時だけでも と 何かが救いの手を差し伸べてくれたんじゃないか。
「神」というモノはいるとは思わない、けれど・・・。


キズナが望む通りに、キズナの身体に口づける。
唇、首筋、腕、胸、腹、脚・・・。
キズナの身体は熱くて、柔らかい。少しでも力を入れれば壊れてしまい
そうな程。こうしていると僕の頭も身体も熱くなって、クラクラする。

不思議な感覚。
竜だった時にも、少し感じた事のあるむずむずするようで…切ない感覚。
その感覚が何だか分からないけれど、キズナを見ているとその感覚が
増してゆくような気がした。



キズナの身体に口づける度に、キズナの口から漏れる熱い吐息を聞いて
自分の中にあった何かが呼び覚まされる。
そして、それをどうすればいいのか自分でも分からなくなる。


月明かりの下で、2人抱き合って そうして眠る。
それでキズナの心が癒されるなら、今だけでも・・・。


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