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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 04/27/07:13

僕の在るべき場所


+++++++++++++++++

良い匂いがする。
料理の匂いだろうか? 匂いが気になって目を開ける。

僕は大きな背中に背負われていた。
濃い茶色の髪、耳には金色の珥堕。随分と大きな男の人が僕を背負って
鍋の前で何やら作業をしている。

「シュラ、じゃあ 後の事はお願いしていいわよね?」

後ろから女の人の声がする。
いつも僕が聞いていた歌と同じ声・・・。

男の人は鍋から離れて、声のする方へと移動した。
居間…だろうか? そこには冒険装備を纏った黒い髪、紅い瞳の女の人
が立ってこちらを見ていた。
大きくて強い瞳の・・・。

「おい! ニオ! まさかお前全部オレに押し付けて・・・
 探索に出るってんじゃないだろうな?」

男の人は少し情けない声を出して女の人に話しかけている。

「探索に出たら1日どころか何日もかかるだろ!
 その間のシオンのミルクとかど〜すんだよ! オレの乳からは
 そんなモンでやしねぇんだぞ!」

……この会話だけでも2人の力関係というのがよく分かる。
仲はとてもいいみたいだけど、女の人の方が強いみたい。

「ミルクならうちにいるウヤギから分けてもらえばいいでしょ。
 あ そういえば森にいるアシュケナードも今子育て中だし、話せば
 少しは分けてもらえるんじゃないかしら?」

「お気楽に言うなよ! まだコイツ首も座ってねぇのに、母親の
 お前が側にいなくてどうする!」

女の人は出かける気満々の様子で、男の人の言葉にも動じずニコニコと
笑っている。

「…身重の私をほったらかして、「島」に通っていたくせに・・・
 そういう事を言える立場?」

女の人の言葉に男の人の身体は硬直し、言葉を失ってしまった。
同時に後ろで鍋が噴いた音がして、男は慌てて鍋の前へと戻る。

「じゃ パンツを剥きに行ってきます。
 後の事はよろしくね〜」

女の人はそのままその場を立ち去り、家の中は僕と男の人だけに
なってしまった。
噴いた鍋を前に慌てて火の加減を見、時折背中の僕の様子を伺いながら
男の人は料理をつづけている。

「・・・全く どうしようもねぇ奴。
 お前だけは アイツに似てくれるなよ。男の子は母親に似るとか
 言うが…出来りゃ似て欲しくねぇやな。」

優しげなまなざしで僕を見て男の人はそう呟いた。

「お前達の子供だ。どちらにも似ているだろう。ニオからも様々な
 要素を継いでおるから、似て欲しくないと言うても・・・のぅ。」

しゃがれたような声が男の人の中から聞こえる。
この声は…「テラ」だ。僕に「ホルス」という名を与えてくれたテラ。
…そうか、テラはこの男の人と共にいる何かなんだ。


ここが僕の在るべき世界。
新たな生を授けられ、生きる世界。



+++++++++++++++++


キズナを抱いてウトウトとしている間に見た物。

今の僕にとってはあちらの方が夢なんじゃないかって気がする。
あと少しでこの世界が消えてしまうと分かっているのに…


キズナはすやすやと安心しきって眠っている。
周りに人が増え、殺伐とした空気が流れていても僕の側にいる時は
優しい顔で安らかな顔で・・・。
頼られ、必要とされる事がこんなに嬉しい事だとは思わなかった。
いいや 僕が竜だった時も彼女はそうしてくれていた。
お互いにとってなくてはならぬ相手だった。お互いが一緒にいたから
こそ強くなれた。安らぐ事が出来た。


何よりも大切な相手。




もう この世界だけでしか共にいる事は出来ないけれど・・・。



島のなくなるその日まで、精一杯の事をしよう。

最後の最後まで…
僕は貴女と一緒にいたい。

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