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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 03/29/13:41

いつか終わる世界



+++++++++++++++

「ぱいろん… ぱいろん!」


誰かが僕の名を呼ぶ。
島でもない、竜だった僕がいた世界でもない闇の世界で。
誰かが僕に呼びかけている。

周りを見回しても誰もいない。闇しかないこの場所に何故僕がいる
のか。それすらもわからない。
あの島に来てから、訳のわからない事ばかりだ。

死んだ筈の僕が、こうして生きている事。
竜だった筈なのに 人の姿をしている事。
見知らぬ誰かが、僕を大切にしている世界がある事・・・。


「お前は 何を迷っておるのだ?
 既に行く先も決まっておるだろうに、未だ狭間を漂うのは
 何故だ? そなたも死して掟を知った。

 ならば 過去の想いを洗い流して在るべき場所へと帰らねば
 ならぬ。 そなたの持つ記憶は新たな世界では不必要じゃ。」

闇の中から白いひげを蓄えた老人が現れる。

・・・世捨て人「アルシンハ」
あの世界で、アクバーラで神聖な竜使いとして崇められている…
ゆんまおの師匠でもある人。

「在るべき場所? 何それは?
 あの島の事? ゆんまおのいるあの島の・・・。」


老人は僕を見て溜め息をつき、言葉を続ける。

「あれは違う。あれは夢の世界。いつか消える世界じゃ。
 おぬしの在るべき場所ではない。

 既におぬしは在るべき場所で新たな身体と、新たな家族を
 得ておるではないか。 それを何故受け入れぬ。」

「ゆんまおがここにいるからだ。
 名前も顔も違うけど・・・。アレはゆんまお。
 僕の一番大切な人。僕の…。」

僕の答えに老人は戸惑い、そして僕の手を取る。

「おぬしとゆんまおは"1度"死に別れたが、あの時は聖なる力で
 おぬしは再び甦った。「聖なる竜」として。

 じゃが、復活は2度はない。
 おぬしはあの後 ゆんまおの為に死に、新たな世界へと流転したのだ。
 ぱいろんとしてではなく、新たな命として。」

どう言う事だろう?
アルシンハの言葉は呪文のように聞こえて…僕にはよくわからない。
ただ 僕はあの頃のようにゆんまおといたいだけなのに。

「おぬしの知らぬ、真実を見せよう。」
 

アルシンハが右手を上げると、見覚えのある懐かしい景色が周りに現れた。

暗く垂れ込める雨雲、降りしきる雨の中。
ソーマの樹の下で、誰かが墓標の前に踞っている。
墓標に刻まれた名は「ぱいろん」 僕の名前。

踞っている者の右手には短剣が握られ、左手には白い竜の仔…
僕が死んだ後、新たに生まれた「聖なる竜」
短剣は竜の仔の腹を切り裂き、墓標にその血と臓物が注がれる

「これでぱいろんが甦るなら…」

墓標の前にいたのはゆんまおだった。
焦点の合わぬ目で、墓標に血を注ぎアクバーラで禁忌とされている呪を
唱え始めた。
僕が死んだ事で、ゆんまおの心は壊れてしまったのだ。
死した僕を甦らせる為に、竜使いとしての禁忌を犯してしまった。
アクバーラで最も重い罪…死した者を甦らせる屍術を発動させようと
して、新たに生まれた世界を統べる竜を殺してしまっただなんて・・・。


周りは再び闇に包まれた。
僕の知らぬ過去の記憶。見せられたモノがあまりにも辛くて、
僕は泣いていた。

僕のせいだ。
僕が死んだ後、ゆんまおがそんな罪を犯していたなんて!

「それほどまでに、ゆんまおはおぬしを愛しておったのだ。
 おぬしを失って気がふれてしまう程に。

 彼女は罰を受けねばならぬ。
 これからの流転の中で、常に独りで生き続けなければならない。」


アルシンハの声が闇の中で響いた。

「しかし おぬしらの絆はとても強い物なのであろうな。
 再びまみえる事等 ありえんと思ったが…。

 じゃが 夢は続かぬ。
 在るべき物は在るべき世界へと戻るのが決まりじゃよ・・・。」


老人はそう言い残して 姿を闇へと消した。

+++++++++++++++




よる、やえいちでぼくはキズナにいった。

「キズナがのぞむなら、ぼくはずっとずっとキズナのそばにいるから。」

そのことばをきいてキズナはとまどったかおをし…ぼくのみぎてを
りょうてでにぎって、そのてにほおずりをしながらいった。

「…そうだね、世界が終わるまではずっとそばにいてね。」


キズナはきづいている。
このせかいが いつわりであることを。
このせかいが ゆめのはざまにあることを。
いつまでもこうしていっしょにいるじかんがつづかないことを。


キズナはいう。このせかいは「20日間の呪い」だと。
たましいをけずり、たにんのたましいをうばってじぶんのきずをいやして
たたかうだけの「のろい」。



「のろい」でもいい。
そのおかげでこうしてぼくはキズナにあえた。
こうしてだきしめてもらえる。だきしめることができる。

ゆめでも。ひとときだけでも。




貴女と共にいる事が出来るのなら。

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