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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 03/29/16:18

キズナの望む事


月明かりの下で、キズナが纏っていた衣服を脱いだ。
白い肌に残る傷跡。
その身体をキズナは「汚れている」と悲しそうな顔をして言った。

汚れてなんかいないのに。
とても綺麗な身体なのに。
どうしてキズナはそんなことを言うのだろう?

「どす黒く汚れた私は、すなわち魔物と同じで、
 いつ狂ってしまうか分からない」

「だから、ホルスの綺麗な心で私を救って…、
 私のこの体をどうか…ホルスの唇で浄めて欲しいの…」

キズナが僕を見てそう言った。


傷ついた魂、傷ついたキズナ。
罪を償う為に与えられた罰の重さに、叶わなかった己の願いに。

こうして僕が手を差し伸べて、共にいる事も理に反しているのかも知れ
ない。でも こうして巡り会えたのなら・・・。
一時だけでも と 何かが救いの手を差し伸べてくれたんじゃないか。
「神」というモノはいるとは思わない、けれど・・・。


キズナが望む通りに、キズナの身体に口づける。
唇、首筋、腕、胸、腹、脚・・・。
キズナの身体は熱くて、柔らかい。少しでも力を入れれば壊れてしまい
そうな程。こうしていると僕の頭も身体も熱くなって、クラクラする。

不思議な感覚。
竜だった時にも、少し感じた事のあるむずむずするようで…切ない感覚。
その感覚が何だか分からないけれど、キズナを見ているとその感覚が
増してゆくような気がした。



キズナの身体に口づける度に、キズナの口から漏れる熱い吐息を聞いて
自分の中にあった何かが呼び覚まされる。
そして、それをどうすればいいのか自分でも分からなくなる。


月明かりの下で、2人抱き合って そうして眠る。
それでキズナの心が癒されるなら、今だけでも・・・。


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僕に出来る事


初めて島の怪物に敗北した。
マナを奪われ、力が抜ける。

島の崩壊は進み、島は随分と小さく狭くなってしまった。
崩壊に追われて島に残った人間達が集まり出し、再び人同士の闘いが
活発になる。

僕は・・・最後まで島に残る事が出来るのだろうか?



夜 それぞれが眠りにつく。
僕は焚き火の側に座り、ぼんやりと考え事をしていた。
アルシンハの言っていた言葉を思い起こしながら、何とかしてキズナを
救う事は出来ないのか。

ふらりとキズナが僕の側へとやって来た。
思い詰めた顔をして僕の前に立つ。

「ホルス…これを」

キズナはネクタイをほどくと服のボタンを外し、服を脱いだ。
服が地面に落ち、キズナの肌が月明かりの下で露になる。華奢な身体には
たくさんの傷跡。 痛々しい程の傷跡。

「わたし…駄目な人間だったんだ。」

キズナが暗い目をして自分の事を話し始める。
嫌な事があれば自分を傷つけてしまうのだと。そしてそれで自分だけ
じゃなく友達と大切な人まで無茶苦茶にしてしまったのだと。
僕はそれを黙って聞いている。

「私、狂っているんだ。

 夢の中にも出てくる、私と同じ顔をした「私」がいうの、
 お前は愛の為に狂った女の生まれ変わりだから、やっぱり今の人生も
 狂って終わるんだって…」

その言葉を聞いて僕の身体は強張ってしまった。
サンサーラの掟で失った過去の記憶。キズナは前の記憶なんて全く持って
いないはずなのに・・・
どこかで魂はそれを記憶しているのだろうか? あの悲しい記憶を。

「ごめんね、ホルス。大好きだけど、私いつかきっとあなたを
 傷つけてしまうから…」

そう言うとキズナはそっと僕の唇に唇を重ね、そのまま立ち去ろうとする。


思わず僕はキズナの腕を掴んで、キズナの身体を引き寄せた。
小さなキズナの身体を抱きしめる。

「行っちゃ駄目。 キズナは僕に言った。
 この世界が終わるまで側にいてって。だから離さない。

 もしキズナが狂って僕を殺そうとしても。僕はキズナから離れない。
 前の時も 僕はキズナの為に死んだ。
 だから・・・。」

キズナがしたように、僕もキズナの唇に唇を重ねて…
もう一度その身体を抱きしめた。



離すものか。決して。


僕のせいで罪を犯し、こんなに傷ついてしまったキズナ。
赦される日まで独りでいなければならないキズナ。
こうして僕が一緒にいる事が許されるのも、ほんの一瞬の時間だけだろう。

ならば その一時だけでも 彼女の側にいよう。
キズナの心の渇きをそれで癒せるなら。


大好きな貴女の為に今の僕に出来る事は それだけだから。


ホルスという名前


僕の昔の名は「ぱいろん」
今の僕の名は「ホルス」

昔の事は思い出せた、けれど "今"の事は何もわからない。
アルシンハは

「既におぬしは在るべき場所で新たな身体と、新たな家族を
 得ておるではないか。」

と言っていた。 ならば、この「ホルス」という名も僕が在るべき
場所で名付けられたのか?



島の崩壊が2日前から始まった。
人が減り、マナが減り、夢のこの世界を構築するマナが減って少しずつ
少しずつ島が崩壊している。
地面が、木々が、砕けて霧散して…島にいる人々は皆安定した地面の方
へと移動する。 閑散としていた地域に人が集まり出す。

閑散としていたから回避出来ていた闘いも、また回避出来なくなるよう
な気がする。 キズナの言う「呪いの20日間」が終わるまで、僕たちは
闘わねばならない。自分が生き延びる為に。


ゆんまお・・・いや 今はキズナ。
夜、彼女と共に眠っている時に彼女が見せる苦悶の表情。
キズナとして流転した先で、どれだけ辛い想いをしたのだろうか?
僕がそっと抱きしめる事で少し安心したような顔になるけれど・・・。

「常に独りで生き続けなければならない。」

それがキズナに科せられた罰。
愛しても報われず、友を得る事も出来ぬ 永劫の孤独。
痛みよりも辛く苦しい罰。

一緒にいられるのは後何日なのか。
呪いの終わる日までずっと一緒にいられたとしても、それも後7日間。
その前に消えてしまうかもしれない不安定な時間。

それでも、その短い間だけでも一緒にいられればいい。
短い間だけでも その心の穴を埋める事が出来るのなら・・・。

「……ホ…ル…ス…」

キズナが眠りながら僕の名を呼んだ。
嬉しくて、そっと胸に抱き寄せて僕も眠る。
アクバーラにいた時のように、2人身体を寄せあって眠る。
あの頃にはもう戻れないけれど、今この時だけは・・・・・・。




+++++++++++++++

「・・・命が宿った。
 2人目じゃな。喜ばしい事だ。」

「それは本当か? ペレ。
 まさか また子が出来るとは思いもせなんだが・・・。」

「何を言うか テラ。
 竜人同士が夫婦になること自体珍しい事じゃが、既に1人生まれて
 おるのだから2人目が出来てもおかしくなかろうよ。」

低くしゃがれた声が微かに、頭の中へと聞こえる。
僕の側に、僕のいる場所と同じ場所にいるのが "ペレ" と呼ばれたモノ。
もう1人の "テラ" は何処か別の場所にいるようだ。

「まだ 母親ですら気付いておらぬ。
 じゃが、確かにここに新たな生命がいる。 新たなる我らの同族の
 誕生じゃな。」

嬉しそうにペレとテラは話している。
僕はただそれを聞いているだけしか出来なかったけれど、2人は微睡む僕に
いつもいつも語りかけてくれた。

「ふむ 名がないと不便じゃな。
 どうした物か?」

「名を付けるのは親の役目じゃが…レーンの時のように我ら2人が「守護名」
 を与える事は出来よう。 気は早いがつけてしまおうではないか。」

「レーンには天空の守護を与えた。2人目のこの者にも天空の守護を。」

「空のように雄大に、そして天駆ける太陽のように力強い者になるように
 我ら火と大地の守護竜がそなたに名を与えよう。」





「お前の名は・・・ホルス。」

+++++++++++++++

罪と罰



アルシンハは言った。

「彼女は罰を受けなければならない。」と。

この先流転し続ける先で、相棒も友を得る事なく孤独のうちに生き、
独りで死に行く。求めても決してそれは手に入らない。

罪が赦されるその時まで・・・。


それが世界を統べる竜を殺したゆんまおに科せられた罰。
僕にはどうする事も出来ないのだろうか?

もし、僕に何か出来るのなら・・・出来る限りの事をしたい。
彼女の心が壊れてあんな罪を犯してしまったのは僕のせいだから。

再びまみえる事はない筈だったとアルシンハは言っていたけれど、
今 こうして僕はゆんまお…キズナと出会った。
それだけ縁が深く結ばれているのなら、何か僕に出来ないか。
そう思っている。

それが理から外れている事で罪になったとしても構わない。

あの時から僕は決めているから。
あの洞窟で彼女の手を取った時から、島でキズナに出会った時に
再び決めたんだ。

僕は彼女の為に生きる。 …そう決めたのだ。



「…そうだね、世界が終わるまではずっとそばにいてね。」

今はこの言葉の通りに。
この島にいる限り 僕はキズナの側にいよう。
彼女が望むなら、どんな事でもしよう。

一緒にいられる時間は短くとも。




愛する貴女の為なら。

いつか終わる世界



+++++++++++++++

「ぱいろん… ぱいろん!」


誰かが僕の名を呼ぶ。
島でもない、竜だった僕がいた世界でもない闇の世界で。
誰かが僕に呼びかけている。

周りを見回しても誰もいない。闇しかないこの場所に何故僕がいる
のか。それすらもわからない。
あの島に来てから、訳のわからない事ばかりだ。

死んだ筈の僕が、こうして生きている事。
竜だった筈なのに 人の姿をしている事。
見知らぬ誰かが、僕を大切にしている世界がある事・・・。


「お前は 何を迷っておるのだ?
 既に行く先も決まっておるだろうに、未だ狭間を漂うのは
 何故だ? そなたも死して掟を知った。

 ならば 過去の想いを洗い流して在るべき場所へと帰らねば
 ならぬ。 そなたの持つ記憶は新たな世界では不必要じゃ。」

闇の中から白いひげを蓄えた老人が現れる。

・・・世捨て人「アルシンハ」
あの世界で、アクバーラで神聖な竜使いとして崇められている…
ゆんまおの師匠でもある人。

「在るべき場所? 何それは?
 あの島の事? ゆんまおのいるあの島の・・・。」


老人は僕を見て溜め息をつき、言葉を続ける。

「あれは違う。あれは夢の世界。いつか消える世界じゃ。
 おぬしの在るべき場所ではない。

 既におぬしは在るべき場所で新たな身体と、新たな家族を
 得ておるではないか。 それを何故受け入れぬ。」

「ゆんまおがここにいるからだ。
 名前も顔も違うけど・・・。アレはゆんまお。
 僕の一番大切な人。僕の…。」

僕の答えに老人は戸惑い、そして僕の手を取る。

「おぬしとゆんまおは"1度"死に別れたが、あの時は聖なる力で
 おぬしは再び甦った。「聖なる竜」として。

 じゃが、復活は2度はない。
 おぬしはあの後 ゆんまおの為に死に、新たな世界へと流転したのだ。
 ぱいろんとしてではなく、新たな命として。」

どう言う事だろう?
アルシンハの言葉は呪文のように聞こえて…僕にはよくわからない。
ただ 僕はあの頃のようにゆんまおといたいだけなのに。

「おぬしの知らぬ、真実を見せよう。」
 

アルシンハが右手を上げると、見覚えのある懐かしい景色が周りに現れた。

暗く垂れ込める雨雲、降りしきる雨の中。
ソーマの樹の下で、誰かが墓標の前に踞っている。
墓標に刻まれた名は「ぱいろん」 僕の名前。

踞っている者の右手には短剣が握られ、左手には白い竜の仔…
僕が死んだ後、新たに生まれた「聖なる竜」
短剣は竜の仔の腹を切り裂き、墓標にその血と臓物が注がれる

「これでぱいろんが甦るなら…」

墓標の前にいたのはゆんまおだった。
焦点の合わぬ目で、墓標に血を注ぎアクバーラで禁忌とされている呪を
唱え始めた。
僕が死んだ事で、ゆんまおの心は壊れてしまったのだ。
死した僕を甦らせる為に、竜使いとしての禁忌を犯してしまった。
アクバーラで最も重い罪…死した者を甦らせる屍術を発動させようと
して、新たに生まれた世界を統べる竜を殺してしまっただなんて・・・。


周りは再び闇に包まれた。
僕の知らぬ過去の記憶。見せられたモノがあまりにも辛くて、
僕は泣いていた。

僕のせいだ。
僕が死んだ後、ゆんまおがそんな罪を犯していたなんて!

「それほどまでに、ゆんまおはおぬしを愛しておったのだ。
 おぬしを失って気がふれてしまう程に。

 彼女は罰を受けねばならぬ。
 これからの流転の中で、常に独りで生き続けなければならない。」


アルシンハの声が闇の中で響いた。

「しかし おぬしらの絆はとても強い物なのであろうな。
 再びまみえる事等 ありえんと思ったが…。

 じゃが 夢は続かぬ。
 在るべき物は在るべき世界へと戻るのが決まりじゃよ・・・。」


老人はそう言い残して 姿を闇へと消した。

+++++++++++++++




よる、やえいちでぼくはキズナにいった。

「キズナがのぞむなら、ぼくはずっとずっとキズナのそばにいるから。」

そのことばをきいてキズナはとまどったかおをし…ぼくのみぎてを
りょうてでにぎって、そのてにほおずりをしながらいった。

「…そうだね、世界が終わるまではずっとそばにいてね。」


キズナはきづいている。
このせかいが いつわりであることを。
このせかいが ゆめのはざまにあることを。
いつまでもこうしていっしょにいるじかんがつづかないことを。


キズナはいう。このせかいは「20日間の呪い」だと。
たましいをけずり、たにんのたましいをうばってじぶんのきずをいやして
たたかうだけの「のろい」。



「のろい」でもいい。
そのおかげでこうしてぼくはキズナにあえた。
こうしてだきしめてもらえる。だきしめることができる。

ゆめでも。ひとときだけでも。




貴女と共にいる事が出来るのなら。

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