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誰かの見る夢の話

何処の島にいる"ホルス"という名の青年の夢の記憶。
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  • 04/29/16:50

そこに確かに在るモノ


しまにいるけはいがまたへっている。
いきるちからをうしない、ひとがきえていく。

「人間と闘って負けた時より、この島の怪物と闘って負けた時の方が
 失う力が大きい。」

おなじばしょにいるひとのだれかが、そんなことをいっていた。
ひをおうごとに そのうしなうちからがおおくなるのだと。
さいしょは ヒトとたたかうほうがこわかった。
けれど、もしこのひとがいっていることがほんとうなら・・・
かいぶつとたたかうことのほうが おそろしいことなのかもしれない。

ぶきやぼうぐをそろそろつよくしたほうがいいかな?
そんなことを ふとおもった。




ーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・ここを通す事は出来ねぇな。」

聖地への扉を守る番人が、あの人にそう言った。
番人に渡す為、あの人が立ち食い屋で禁忌を犯してまで手に入れた
「牛丼弁当」を食べながら番人はあの人をチラリと見る。

「通してやりたいんだけどな。お前の連れがな・・・。」

番人が僕を凝視する。

「そんなウロコじゃ弱くて駄目だ。
 ウロコを強くしてやらねぇと ここを通るのは難しい。

 ーーーの血を浴びさせて来いや。
 そうすりゃウロコが固くなってそいつも強くなっから。」


旅を始めた時、同じように僕を強くする為にあの人は僕を"泉"へと
連れて行ってくれた。 その泉の水を浴びればウロコが固くなると
教えてくれたヒトがいたから。

「行こう。ーーーの巣へ。
 危険かも知れないけれど・・・アンタの為だもの。
 頑張って 2人で行こうね。」

あの時と同じように、あの人は僕の為に危険を承知で僕を連れて
目的地へと向う。 自分が危険な目に遭うかも知れないのに…。


いつもそうやって僕の事を考えてくれている。
そんなあの人の役にたてるのなら・・・。 

ーーーーーーーーーーーーーーー




いまのぼくには"ウロコ"がない。
ほのおやキバ、ツメやかたなから ぼくのみをまもっていた 
かたいかたいウロコ。 あのひとがきけんをおかしてまで2かいも
つよめてくれた じまんのウロコ。

いまのぼくには"ツメ"がない。
どんなてきでも きりさいた ぼくのぶきだったツメ。
あのひとをまもるために、たちはだかるてきをたくさんきりさいたツメ。

いまのぼくには"キバ"がない。
どんなものも かみくだき えぐりとったぼくのぶきだったキバ。
あのひとをまもるため、そしてじぶんがいきるために、かぞえきれぬ
ほどのどうぞくをかみくだいたキパ。


ヒトのからだはとてもよわい。 
だからぶきとぼうぐをつかって からだをまもり、ちからをふやす。
すこしたよりなくてふべんだけど・・・

そのかわり つめのないこのては キズナをだきしめることができる。
きばのないくちで キズナにふれることができる。


うしなったものはあるけれど、あのときかなわなかったことをてに
いれた。 すきなひとをだきしめてふれることのできるからだ。

ずっとずっと こうしたかった。


だいすきなひとをだきしめて ふれて・・・みたされたかったから。




よるになり、3にんともがひのまわりでねむる。
すこしまえから、キズナはぼくといっしょにねむるようになった。
ぼくがキズナをだきしめ、キズナもぼくをだきしめる。

ふれあうだけであたたかくてみたされるこころ。


だきしめて ゆびでふれる。くちびるでふれる。
やわらかなからだ、あついはだ、ちいさなむね、ぬれたくちびる。
たしかにそこにキズナがいる。


いま ここで いちぱんたしかなモノ。
キズナのあたたかな・・・。

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自分自身の事


ひととのたたかいで、ぼくはきずをおってたおれた。
キズナとリョウコがふたりでたたかって、あいてをたおしてくれた。

そのあとのたたかいに、ぼくもたちあがりさんかする。
ひとりたおれたままでいるなんで できない。
キズナはぼくが・・・

きりょくだけでたたかっていたせいか、たたかいがおわるとどうじに
ぼくはそのままたおれてしまった。
いしきがうすれてゆく・・・。




ーーーーーーーーーーーーーーー

「無茶ばかりするんじゃないの!
 ーーーー。 アンタはまだ小さいんだから・・・」

あれは 初めて外に出たときの事。
まだ身体も小さくて闘う事も知らなかった僕は、初めての戦闘で傷を
負って倒れてしまった。

あの人は必死になってぼくを手当してくれた。
無茶をするなと 怒っていたあの人の言葉を聞いて、僕は悲しくなる。
だって…何の役にも立てないの? そう思うと情けなくて悲しくて。 

「無理をして アンタが怪我をして倒れたら…悲しいもの。」

あの人が泣いていた。僕の為に?
泣かないで、もう無理はしないから。 笑って欲しくて僕はあの人の
頬をつたう涙を舌で舐めとった。泣かせたくなかったから。
なぐさめたくて身体をあの人に擦り寄せた。

「ふふふ 甘えん坊なのね。
 ・・・それとも 心配してくれたのかな?」

あの人は笑って僕を抱きしめてくれた。



「アンタはこれからもっと大きく、強くなる。
 だから 時間をかければきっと強く、勇ましくなれるから・・・
 その日がくるまでは 少しずつ頑張ればいいのよ。」

川から獲って来たなまずを僕に食べさせながら、優しい声であの人は
そう言った。
大きく強くなれれば、僕はあの人を護る事が出来るのだろうか?

だとしたら、僕は大きく強くなりたい。

ーーーーーーーーーーーーーーー



きがついたとき、もうひがくれてよるになっていた。
キズナがずっとそばについて かんびょうしてくれていたみたい。

まだ すこしからだがいたいけど、ずいぶんとらくにはなっている。

「ごめんね。 ぼく さきにたおれてキズナをまもれなかった。
 こんなによわくて・・・ぼくのこと きらいになっちゃう?」

おきあがって、キズナのまえにすわってから おもわずでたことば。
キズナをまもるときめたのに、さきにたおれてしまったことがとても
なさけなくて…かなしくて…。

「嫌いにならないよ、ホルスは大好き、だよ。だから泣かないで」

やさしいこえで、キズナはそういってぼくのあたまをじぶんのむねに
だきよせてくれた。
あたたかくてやわらかいキズナのむね。むねのこどうがきこえる。
なつかしい どこかできいたことのあるおと。

そのままキズナに からだをゆだねる。


ここちよくて そのままいしきがまたおちていく。
からだのちからがぬけて・・・。




+++++++++++++++

「あらあら やっと起きたの?
 本当にこの子は寝てばかりねぇ・・・」


優しい声が聞こえた。
少しして、僕の顔を覗き込んだのは黒い髪の女の人。

「赤ン坊は 寝るのが仕事だろう? 何を今更・・・」

低く力強い声がして、女の人の後ろから男の人が顔を出した。

・・・キズナは? キズナは何処に行ってしまったの? ここは?
不安に駆られて 僕は泣いてしまった。

「起きたと思ったら 大泣きか?
 あ〜 腹が減ってんのか? それともおしめか?」

男の人があたふたとし始める。 女の人は泣いている僕を抱き上げて
胸に抱くと優しく背中を撫でてくれた。 

優しい胸の鼓動。
キズナと同じ鼓動・・・?

それとも・・・
鼓動を聞いて少し心が落ち着いたのか、また意識が朦朧としていく。

「ん? また寝はじめたのか? 腹が減っていた訳でもおしめが濡れて
 いた訳でもないって事か? 何か 変わった奴だな・・・。」

「自分の息子にそれはないでしょう。 でも… とても不思議な子ね。」


歌が聞こえる。 



まどろみながら聞いていたあの歌が。



誰? あなた達2人は 誰なの?
あの人でもキズナでもないのに、僕を優しく見つめて包んでくれる。

そして ここはどこなの?
島ではない場所、あの人のいた世界でもない場所。


僕は・・・どうして ここにいるの?
意識がまた落ちて行く。深い深い闇の中へ・・・

歌声が 微かになり・・・聞こえなくなった。

+++++++++++++++



きがつくと、ぼくのめのまえでキズナがねむっていた。
あのまま ふたりでねむってしまったみたい。

キズナのかおを そっとゆびでふれてみる。
ほほ、まぶた、はな、・・・ちいさなくちびる。
たしかにそこにあるかんかく。ちゃんとふれることができる。
ゆめじゃない。キズナはたしかにここにいる。



なにがげんじつでなにがゆめなのか、じぶんでもわからない。

ここにきたときには なにひとつおぼえていなかったのに とつぜん
よみがえるきおく、そしてみたことのないひとたち。



どうしようもなくふあんになる。



ぼくは・・・いったいなにものなんだろう?


貴女が望むなら


しまのたたかいで、きえたひとたちがいる。
いきるちからである"マナ"をうしない、しまからすがたをけす。
もうなんにんものひとが"マナ"をうしない、きえていったのだと・・・。
しまにいるだれかがそういった。


みみをそばだてて、めをとじてけはいをかんじる。
たしかに、さいしょにしまにきたときよりもけはいがへっていた。

きえたひとたちはどこへいったのだろう?
きえたひとたちはやはりしんでしまったのだろうか?

きえてしまったら、このきもちもきえてしまうの?
きえてしまったら、キズナのこともわすれてしまうの?

しんでしまったら なにもかも・・・・・・。



ーーーーーーーーーーーーーーー

世界は何時始まったのか?
世界に終わりは来るのか?
終わりが来るとしたらその先に在るものは?

あの人が慕っていた女戦士が、雨の草原でそんな事を言っていた。
それをきいたあの人はどう答えていいのか分からず、少し困った顔を
していた。

誰も知らない 世界の理。
あの 女戦士は解く事が出来たのだろうか?


でも 僕は知っている。
死してもなお魂は不滅だと言う事。
魂は世界を流転し、再び生まれ変わると言う事。



それが "サンサーラ" の理。


・・・どうして僕はそれを知ったのだろう?
何故・・・?

ーーーーーーーーーーーーーーー



いきるためのたたかいはつづく。
たおさなければ、じぶんたちがきえてしまうから。
だからようしゃはできない。

きょうで7かい ひがのぼった。
いっぱいではないけれど、なんとかちからをたくわえてきえずにすんで
いる。キズナもリョウコもぼくも。ひっしになってたたかう。

たたかいがおわるともうくたくたで、ひをかこんで3にんともがちから
なくうずくまる。
キズナがかなしそうなかおをしていたから、どこかいたいのかときいたら
キズナはこうこたえた。

「奪ったり、奪われたりするのは悲しい事だよ。誰かが倖せになれば、
 その分だけ誰かが不幸になる。自分が倖せになるには、誰かを不幸に
 しなくてはいけない。」

とてもとてもかなしそうなかおをして…ぼくはおもわずキズナのほほをなめた。
つよいひかりをもつそのひとみから、ながれるなみだをとめたかったから。

キズナはいっしゅん からだをこわばらせたけど、すこしあかいかおをして

「ふふ…くすぐったいよ。 …ねえ、ホルス。こっち側も、涙…」

そういってはんたいがわのほほをみせる。
ぼくはまよわず、むけられたほほをつたうなみだをなめた。
キズナのほほはとてもやわらかい。このまえだいたときもおもったけれど、
…キズナはとてもちいさくてやわらかくて…あたたかい。


こうしてキズナにふれていると、ふしぎなきぶんになる。
なんだろう このきもち。 いっしょにいるだけでもしあわせなのに・・・。
もっともっとキズナにふれたいとおもうこころ。
こわさないように、そっと。 そして、キズナのすべてにふれたい。

「ちょっと、昔の嫌な事を思い出してしまっただけ。
 もう大丈夫だよ、ホルスが側に……」

キズナのこえで、われにかえった。
さいごのほうのことばは、とてもとてもちいさなこえでつぶやいていたけど
ぼくにはわかる。




ーーーーーーーーーーーーーーー

小さくなってしまったあの人が、残念そうに僕を見上げる。

「もう抱っこしてあげられないわね。」

洞窟で独りで生きていた間に、僕の身体は随分と大きくなっていた。
あの生きる為に闘った日々が、僕の身体を強くし、大きくしたのだ。
洞窟から出て、あの人と2人で旅を続ける事になった初めての夜。

悲しそうな顔のあの人を慰めたくて、頭をそっとあの人の側へと降ろす。
あの人は両手を広げて僕の頭を抱きしめてくれた。

「心配してくれているの? 優しい子・・・。
 抱き上げられないけれど、こうして頭だけでも抱きしめられる。

 アンタはとても優しい。こうして触れればすぐに分かる。」


小さな身体から感じる暖かな想い。
大好きなあの人の心。
触れる部分は小さいけれど、触れ合う事で僕の心も暖かくなって幸せに
なれた。心が満たされた。

ーーーーーーーーーーーーーーー



キズナがのぞむなら、ぼくはずっとキズナのそばにいよう。

かたときもはなれず、キズナをまもろう。
まえにであったときのように、いのちをかけて。


だから ぼくをだきしめて。
そして・・・もっとキズナをかんじさせて。




それだけで ぼくはきっとつよくなれるから。


ずっと一緒にいたいから


ーーーーーーーーーーーーーーー

背中が暖かい。

まだ 僕が小さくて何処かに預けられていた頃。
夜になったら、いつもあの人が一緒にいてくれた。
毎晩毎晩、膝に抱えて窓を見ながら外の世界の事を僕に話してくれて、
僕はその話を聞くのがとても好きだった。
まだ見ぬ世界はどんな所なのか、何があるのか。
あの人の話を聞く度に僕の心は踊った。

「早く一緒に旅に出られるといいな。
 あんたにも見せてあげたい。空と水がどんなに青くて美しいか。
 世界がどれだけ広くて謎に満ちているか。

 2人で一緒に・・・。」

開かれた窓から見える小さな星空を、あの人と見ながら・・・
あの人の暖かさを背に感じながら・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーー



ひがのぼるすこしまえ、せなかがあたたかくてふしぎにおもった。
めをこすりながらおきあがって、みてみたらキズナがぼくのもうふに
もぐりこんでいっしょにねていた。

いつもひとりでねているときとちがって、くるしそうなかおはして
いない。キズナのかおをみてちょっとほっとする。
ホントのこというと、びっくりしておおごえがでそうになったけど、
しずかにしなきゃ。キズナをおこしてしまう。

よるねむるとき、キズナはいつもくるしそうにしている。
きっとちゃんとむねれていないんじゃないかとおもう。

こうして いっしょにねたらちゃんとねむれるのかな?

キズナをおこさないようにそっともうふにはいり、キズナをだきよせる。
キズナはちいさくてあたたかい。
こんなにちいさいからだで、このしまでひっしになっていきている。

たたかいのとき、いちばんちいさいせいか ねらわれるのはいつもキズナ。
ぼくたちのなかで、たぶんきずもいちばんおおくてつらいはずなのに
キズナはなにもいわない。


もっと ぼくたちにあまえればいいのに・・・。



ーーーーーーーーーーーーーーー

いつだったろう。

一緒に旅をしていた時に、2人揃って危険とされている街の周りを囲む
湖に落ちて、2人揃って敵にノされて放り出された事があった。

僕の傷は浅くて済んだけれど、あの人の受けたダメージが意外にも
重くて動く事も出来なくて・・・
暫く街の側の平原で休まなければならなくなった事があった。
どうして良いかわからない僕は、側でおろおろしていたっけ。

樹に寄り掛かって目を閉じていたあの人が、目覚めて僕に手を差し出す。

「ーーーー。 私は大丈夫だから、落ち着きなさい。
 ね、そんなに心配しないで。」

笑いながら僕の鼻を撫でて そう言った。
けれど、時々辛そうな顔になる。思わず声が出た。
いつだってそうだった。 一緒にいるのにあの人は辛い時は何も言わない。
いつも1人で耐えているんだ。

僕がヒトではないから頼れないの?
そう思うと少し悲しくなる。
言葉を持たぬ僕には、気持ちを、想いを伝える術はなかった。
ただ 鳴く事しか出来ない。

「そんなに悲しそうに鳴かないで。
 ・・・そうね。休んでいる間、ずっと側にいて。」

そんなあの人の言葉に、嬉しくなった事を覚えている。
僕はあの人の側で丸くなって座る。あの人は僕の身体に自分の身体を
凭れさせてまた目を閉じた。

僕はあの人を守るように首と尾を丸めて眠った。
こうして一緒にいて、側でぬくもりを感じるのはとても幸せ。


それであの人の不安と辛さを減らせるのならば・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーー



しまでのたたかいはますますはげしくなっている。

まえにたたかったあいてと、またたたかうことになった。
もう まけられない。
このままきえてしまいたくはないから。
キズナとわかれたくないから。


こんかい、かったのはぼくたちだった。
うしなわれたちからが、すこしもどってきてきずがいえる。

たたかいのあと、いどうしてやすむことにする。

しまにいるものはみんなてきとなるものだけど、こんかい はじめて
てだすけをしてもらうことになった。

ひろったいしのちからをぼうぐにつけたすわざをもつもの。

すがたはいぎょうのものだったけれど、ぼくたちのねがいをきいて
ぼうぐにあたらしいちからをあたえてくれた。
いきさきはちがうみたいだけど、もし なにかあればうけたおんを
かえさなきゃならないだろう。 
かれといっしょにいたふたりのおんなのひともヒトではなかった。
・・・そのうちのひとりから、どこかでしる においをかんじた。

なんだっけ? このにおい。
とても ちかい・・・そして……。

ぼくとおなじ ちをもつもののにおい?
ものすごくかすかな のこりかのようだったけれど。



たきびのそばで、キズナがかみをすいてくれる。
それがとてもきもちよくて、めをとじた。

リョウコはそれをみてあきれたかおをしている。そんなにヘンな
ことなのかな?

「もっと髪を綺麗にしたら、ホルスはきっと女の子が放っておかない
 ほどカッコイイよ。妬けちゃうな。」

かみをすきながら キズナがそういった。
かみをキレイにしたら、キズナはよろこんでくれる? 
なら ちゃんとかみをキレイにしなきゃだめかな とおもう。


そうして、キズナがよろこぶなら。
キズナがわらってくれるなら。

ぼくはなんだってしよう。


そして また"あいぼう"だと"なかま"だといってくれるなら、
もっとたよってほしい。
ひとりでくるしませたくないんだ。つらそうなかおはみたくない。



こうやって いっしょにいるかぎり・・・。


秘めた想い。

きょうもたたかいがはじまる。
あいてがだれであってもきょひはできない。つよいあいてだとしても
たちはだかられればたたかうしかない。

にげることはできないのだから。



ーーーーーーーーーーーーーーー

あの人はとても小さかった。
小さくて 非力で ただの人間で・・・。
だけど 誰よりも心が強くて、優しい人だった。

僕の為に2度も危ない場所へと旅をして、僕に強さを与えてくれた。
僕がいなくなったと たった1人で僕を探しに来てくれた。

あの危険な雨の草原を越えて・・・。


一人前になった時、洞窟で再会した時に僕は決めた。
あの人の側に一生いる事を。

あの人を護ると。それで命を失ってもいいと。
僕にとってはあの人が全て。あの人の為に僕の命はある。

その笑顔とその命を護る為なら、僕の命等安いものだ。


ヒトの言葉で言うなら、きっと僕はあの人を愛していたのだろう。
誰にも渡したくはなかった。僕だけのヒトでいて欲しかった。
抱きしめたかった。1つになりたいとも思った。

決してそれは叶う事もなく、あの人にその想いを伝える事も出来ない
けれど…。
でも、側にいるだけで幸せだったんだ。

そうして笑いかけてくれるだけで、名を呼ばれるだけで・・・


だから 聖地を越えて 辿り着いた先のあの闘いであの人を護れて
本当に良かったと思ったんだ。
自分の身が崩れて 消え去るとしても。

・・・・。貴女が助かるのなら…。

ーーーーーーーーーーーーーーー



たたかいにまけて"マナ"をうばわれた そのしゅんかんによみがえるきおく。



なみだをながしながら、かおをぐしゃぐしゃにしてぼくのなをさけぶ
あのひとのかお。ハッキリとおぼえている。


でも それは いつ? どこでだっただろう?




ーーーーーーーーーーーーーーー

世界は1つではない。
そしてその世界を魂は流転する。

流転し、何度も何度も生まれ変わり、生きて死ぬ。


それが生命の理。


・・マの樹の下で泣いているあの人に、誰かがそう話しかけていた。




「今度はーーーーも ・・・を残さなかったから。」

ーーーーーーーーーーーーーーー




マナをうばわれたあと、うしなったちからをすこしでもふやすために
3にんでひっしになってやまねこたちをたおした。

すこしだけ ほんのすこしだけちからがもどる。


よるになってたきびのまわりでやすむ。
ちかくに、ぼくたちからマナをうばったやつらがおなじようにやすんで
いてこちらのようすをうかがっていた。

・・・てがるにたおせるあいてとして、めをつけられてしまったようだ。
このまま きえるまで あいつらにマナをうばわれつづけるかもしれない。

きえてしまったら もうキズナといっしょにいられない。
やっと やっとであえたのに。 またはなればなれになってしまう。

そうおもうと せつなくて・・・。


いまのこのからだなら、キズナをだきしめることができる。

だきしめたい。

そしてかんじてみたい。からだいっぱいにキズナをかんじたい。
きえてしまうまえに。


そして まえにはかなわなかったおもいをつたえたい。

「ずっと アナタがすき だった。

 そして いま、またアナタをすきになった。」



だから…





ーーーーーーーーーーーーーーー

出会ったばかりの頃、あの人はよく僕を胸に抱いてくれた。
暖かくて柔らかくて・・・良い匂いのする胸の中で、僕はいつも安心して
眠る事が出来た。

僕が大きくなったら 今度は僕があの人を抱きしめたい。
ずっとそう 思っていた。

けれど・・・それは叶わなかった。


僕の身体は冷たいから。
僕の腕は固いから。
僕の爪は大きくて鋭いから。





僕が・・・"ヒト"ではなかったから。

ーーーーーーーーーーーーーーー


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